リトアニア高官「全面戦争が政策手段に」 ロシアを非難

【ブリュッセル=中村亮】リトアニアのデイビダス・マトゥリオニス駐北大西洋条約機構(NATO)大使は、ウクライナに侵攻したロシアについて「世界に存在するあらゆる規範を露骨に破った」と非難した。「ロシアは全面戦争を政策手段としており、我々は現実に備える必要がある」と断言し、NATOの軍事力強化を訴えた。
マトゥリオニス氏が日本経済新聞の取材に応じた。同氏は「平和を所与のものだと考え、小規模な戦闘がある程度と思っていた」と話した。NATOや自国政府でロシア軍の動きについて情報収集を進めていたが「欧州の真ん中でこんな戦争が起きるとは実際に起きるまで信じられなかった」と振り返った。
ロシアについて、国際社会で武力を重視する「権力政治」を推進しているようだと主張し「外交を信じていない」と言明した。「我々は屋台骨を強化しなければいけない。防衛や抑止体制をはるかに強化し、ロシアに軍事力を見せつける必要がある」と強調した。武力に対しては武力で対峙すべきだと訴える発言だ。
ウクライナ侵攻を受けて欧州各国は相次いで軍事費を増額したり、新しい防衛装備品を購入したりしている。ドイツは軍事費を国内総生産(GDP)比の2%以上に増やし、米国の最新鋭ステルス戦闘機F35の購入を決めた。ドイツは歴史的に軍事費拡大に慎重で方針転換が鮮明になった。
マトゥリオニス氏は「(ウクライナの)戦況がどうなっても長期的にロシアとの関係を正常化することは政治的に耐えがたく、致命的な過ちだ」と断じた。
NATOがウクライナに軍事介入する可能性に関連し、「この点については曖昧さが大切だ」と述べた。曖昧さを残すことでロシアに対する抑止力になるとみているもようだ。バイデン米政権はウクライナに戦闘部隊を送らないと繰り返し明言しており、専門家からもロシアの挑発行為を誘発しているとの批判が出ていた。
ウクライナ情勢をめぐる米政権からの情報共有が充実していたと高く評価したうえで「驚き、感動さえ覚えた」と話した。情報共有は経済制裁や東欧防衛の強化に向けた米欧連携の土台となり、同盟関係の修復にも寄与したとの見方が目立つ。
中国によるロシアへの軍事支援の可能性には懸念を示した。24日のNATO緊急首脳会議をめぐり「共同声明で(懸念に)触れるのが現実的だ」と語った。「中国によるロシア支援は我々との関係を損なうので中国は支援すべきではないとの明確なメッセージを送る」と述べた。
リトアニアはベラルーシとロシアの飛び地カリーニングラードとそれぞれ陸でつながる。ロシアがベラルーシで影響力を強めたためロシアの脅威が一段と高まったと危機感を強めている。

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