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米、核軍縮条約の存続優先 新START5年延長方針

中国参加は課題

バイデン氏はオバマ政権初期に米ロ関係改善の旗振り役を担った=AP

【ワシントン=中村亮、モスクワ=小川知世】バイデン米政権は新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長に向けてロシアと協議を急ぐ。期限切れが2週間後に迫るなかで延長を望むロシアに歩み寄り、約50年間続く米ロ核軍縮の枠組みの存続を優先する。中国をくわえた軍縮の枠組みの構築は課題として残る。

サキ米大統領報道官は21日の記者会見で、新STARTについて「戦略的安定に向けた頼みの綱だ」と指摘し、5年間の延長を目指す方針を明らかにした。新STARTは2011年に発効し、今年2月5日に期限が切れる。バイデン政権が延長に条件を設けるかどうかは不明だが、失効が迫っており、柔軟な姿勢で協議に臨むとみられる。

新STARTは戦略核弾頭に加え、核弾頭を攻撃目標へ運ぶ潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や大陸間弾道ミサイル(ICBM)、戦略爆撃機の配備数に上限を設けている。米ロは世界の核弾頭の9割を保有するが、新STARTが失効すると、米ソ冷戦時代の1972年以降、初めて米ロの核軍縮の枠組みが消滅する。

ロシアは前向きに受け止めている。タス通信によると、ペスコフ大統領報道官は「歓迎するが、詳細次第だ」と述べた。外務省はバイデン氏が就任した20日に声明を出し、新STARTを前提条件なしで5年延長すべきだと主張していた。

ロシアはトランプ前政権との協議で、ロシアに不利な条件を最小限にとどめる形での暫定延長を探ってきた。延長期間中の核弾頭の保有数の凍結や、自国が開発を進める極超音速ミサイルなどの新型兵器を対象に加える用意があると譲歩を示したが、バイデン政権との交渉でこの方針を維持するかは不明だ。

バイデン政権が延長を目指す理由は2つある。1つは軍拡競争による国防費膨張を避けることだ。新STARTは制限対象の兵器について互いに年18回の査察を認め、核戦力の透明性を高める仕組みになっている。元国務省高官は「査察がなくなると双方が疑心暗鬼になり、核戦力増強を進めかねない」と指摘する。

2つ目は米欧協調の演出だ。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は「(核軍縮に関する)別の枠組みなしに新STARTを失うリスクを取ることはできない」と指摘してきた。ロシアの軍事的脅威にさらされている欧州では新START延長を求める声が多い。バイデン氏はトランプ前政権で深まった米欧同盟の亀裂修復を目指しており、条約延長はその足がかりになる。

バイデン政権は延長期間について、条約が認める最長の5年間を選んだ。米国内には新STARTを衣替えし、中国を参加させたり短・中距離の核ミサイルを制限対象に加えたりすべきだとの声が根強いが、実現のハードルは高い。5年間延長すれば新STARTの後継の枠組みを協議する時間を稼ぐことができる。政権1期目に交渉をまとめる必要性が薄れれば、政治的資源を内政に割ける。

バイデン政権は対ロシア政策で硬軟両様の姿勢を見せる。バイデン氏は20日の大統領就任後にロシアをめぐって、米連邦政府機関への大規模サイバー攻撃や20年11月の米大統領選への介入などについて徹底的に調べるよう情報機関に指示した。ロシアの不正疑惑を暴き、対抗措置を辞さない構えだ。

バイデン政権のこうした姿勢は、過去の対ロシア政策の「失敗」を意識しているからだ。米国は歴史的に政権発足後に米ロ関係の改善を目指すが、政権後期に関係が冷え込んでいくというサイクルが続いてきた。

ブッシュ政権(第43代)はテロ対策、オバマ政権は核軍縮やリビア政策でそれぞれ米ロ協調を打ち出した。対するロシアはブッシュ時代の08年にジョージア、オバマ時代の14年にウクライナにそれぞれ侵攻した。米政権の融和政策がロシアを勢いづけたとの批判がある。

オバマ政権で副大統領としてロシアのウクライナ侵攻に直面したバイデン氏は特にロシア接近に慎重とみられる。バイデン氏はトランプ前大統領をロシアに弱腰と糾弾してきた。オバマ政権下のホワイトハウスで対ロ政策に関わったリン・ルステン氏は「米ロ関係改善は迅速に進まない」と指摘する。

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