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米「財政の崖」土壇場回避 5カ月空費、長期失業が増大

コロナ対策は総額4兆ドルに

(更新)
米上下両院は追加財政出動を決定したが、当初は7月末の決着を予定していた(21日、米議会下院)=ロイター

【ワシントン=河浪武史】米議会は21日、9000億㌦規模の追加コロナ対策を可決した。失業給付の特例延長などを盛り込み、雇用維持策が相次いで失効する「財政の崖」を土壇場で回避した。コロナ対策は総額4兆㌦と金融危機時の2倍超となるが、5カ月もの議会審議の空転で長期失業者は増大。景気回復の勢いは鈍っている。

米国では年明け1月、500万世帯が住居を失うリスクがあった。米連邦政府による家賃滞納者の強制退去の猶予措置は、12月末までの時限措置だったからだ。1200万人の生活者は、失業給付の特例加算も失う懸念もあった。3月に発動した同措置もクリスマス直後の26日に期限が切れるためだ。21日可決した9000億㌦の新型コロナ対策は、強制退去の猶予措置や失業給付の特例支給の延長を決め、米議会はぎりぎりで公的支援の大規模な失効を回避した。

追加対策には、中小企業支援にも3000億㌦を用意した。雇用を維持すれば給与支払い分の費用を連邦政府が補填する仕組みで、もともとは同制度も12月末で完全失効することになっていた。航空会社の雇用維持策も9月末に一部失効したが、今回新たに150億㌦を用意して支援を再開する。

米経済は新型コロナの感染が再拡大する。全米50万カ所を超す飲食店などは営業制限が強まり、12月は8カ月ぶりに失業率が再び悪化する可能性がある。「財政の崖」まで深まれば、ワクチン普及を前に、米経済は二番底に落ち込む懸念があった。

今回のコロナ対策は、約20兆㌦ある米国内総生産(GDP)の5%弱に相当する。3月以降のコロナ対策1~3弾を合わせると、臨時の財政出動は4兆㌦規模に達し、金融危機時の08~09年(約1・5兆㌦)を上回るかつてない経済対策となる。

ただ、コロナ対策第4弾の議会審議は難航した。米上下両院は当初、7月末までに1兆~2兆㌦規模の財政出動を検討。それが大統領選・連邦議会選を前に与野党対立が深刻になり、決着まで5カ月も時間を空費した。

その代償は中小企業の衰退と長期失業の増大だ。コロナ危機が直撃した飲食店は公的支援が徐々に細り、全体の17%(11万店)が長期閉鎖か完全閉店に追い込まれた。27週間以上にわたって職探しする「長期失業者」も394万人まで増え、危機前の4倍に膨らんだ。無形の資産である企業や労働者のノウハウやスキルが失われれば、米経済の潜在成長力を損なうことになる。

このままでは米経済は「雇用なき回復」となりかねない。GDPは危機前に比べ3.5%減まで回復したが、就業者数は6.5%も少ないままだ。コロナ危機は人工知能(AI)やテレワークの普及に道を開き、自動化と国際化で労働市場の構造変化を早めている。財政出動は総額4兆㌦と巨額だが、長期的な視野には乏しい。

バイデン次期大統領は今回の経済対策を「危機脱却への始まりにすぎない」としており、1月20日の政権発足後すぐに追加策を打ち出すと強調する。米経済にはITなど好況業種も少なくなく、成長分野へ雇用の横の移動も必要だ。労働市場の構造変化に対処するには、短期的な財政出動だけではなく、再就職に向けた教育支援など細かな政策整備が欠かせない。

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