ウクライナ支援、ITで新機軸 ベッカム氏はインスタ貸与

【シリコンバレー=奥平和行】ロシア軍による侵攻が続いているウクライナへの支援で、IT(情報技術)サービスを本来の目的とは異なる形で使う新機軸が目立ってきた。著名人が交流サイト(SNS)のアカウントを一時的に貸し出して募金活動を支援し、民泊仲介サイトなどを利用したウクライナ市民への募金も広がっている。
サッカー元イングランド代表のデービッド・ベッカム氏は20日、画像共有アプリ「インスタグラム」のアカウントをウクライナの周産期センターの責任者に引き継いだ。著名人がSNSのアカウントを他人に使わせるのは珍しい。提供を受けた責任者はシェルターに避難する妊婦の画像などを投稿し、寄付を訴えた。
ベッカム氏は2005年から国連児童基金(ユニセフ)の親善大使を務めている。また、インスタグラムのフォロワーは7100万人を上回り、発信力が高い。ベッカム氏はインスタグラムに「保健ワーカーがウクライナの命を救うために行っている素晴らしい仕事について知ってほしい」と書き込み、ユニセフへの寄付を呼びかけた。
民泊仲介サイトを利用した市民への募金も増えている。ウクライナ国内で登録されている部屋を予約・決済する一方、実際には宿泊せずに寄付する形をとる。米エアビーアンドビーは4日、こうした形での予約が48時間で6万泊を上回り、予約総額は190万ドル(約2億3000万円)に達したと明らかにした。
宿泊を目的としない予約・決済もサービスの「目的外利用」に当たるが、同社のブライアン・チェスキー最高経営責任者(CEO)はツイッターで「賢い方法」と評価している。ウクライナ国内で手数料を一時的に免除することも決めた。支援者が支払った金額がすべて部屋を登録している「ホスト」に渡るようにすることで、支援を後押しする。
手芸品などの販売サイトを運営する米エッツィーでもエアビーと同様の使い方が目立っている。さらに同社のサイトではウクライナにおける商品の製作や発送が困難になっていることに対応し、ダウンロードできる「デジタルグッズ」を販売する形を採る出品者が増えた。ある出品者は刺しゅう作品ではなく、型紙のダウンロード販売を始めた。
同社のジョシュ・シルバーマンCEOによると、「ウクライナの零細企業を直接支援することを希望する購入者が増えている」という。9日までに発送を必要としない商品を集めたサイトを開設し、刺しゅうの型紙や絵画などのPDFをダウンロードできるようにした。ウクライナの支援につながる商品の検索や購入を容易にする狙いだ。

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