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中南米、高まる資源ナショナリズム 外資に調達リスクも

中南米で資源ナショナリズムが高まっている。12月19日に大統領選の決選投票を控えるチリでは有力候補が鉱山会社への増税を主張する。メキシコはリチウム、ペルーは天然ガスの国有化を掲げる。背景には新型コロナウイルスによる景気低迷による左派勢力への追い風があり、資源価格への上昇圧力につながる可能性もある。

世界最大の銅生産国チリでは大統領選の決選投票に2位で進出した左派のボリッチ下院議員が社会保障の強化を主張する。財源は鉱山会社への増税だ。

中道右派、ピニェラ大統領の現政権でも鉱山会社への増税につながる法案が議会に提出されている。実効税率は現在の40.3%から82%に達するとの報道もある。業界団体であるチリ鉱業協会(SONAMI)のディエゴ・エルナンデス会長は「(鉱山の)収用といってもよい(高い)水準で、投資を阻害する」と批判する。

仮に同法案が否決されても、決選投票の結果次第では増税案が再浮上しかねない。

メキシコの左派、ロペスオブラドール大統領は10月、リチウム採掘を政府が独占する憲法改正案を提出し、国民に「祖国の全てのリチウムはメキシコ人のためにある」と訴えた。リチウムは電気自動車(EV)向け電池の製造に必要で、メキシコ政府は戦略物資として位置づけている。

米地質調査所によると、メキシコのリチウム埋蔵量は170万トン。同国ではこれまでに採掘された実績は確認されていないが、中国系の企業が2023年に生産を始める予定だ。憲法が改正されれば、原則として民間企業はリチウムを採掘する場合、メキシコ政府と共同出資の会社を設立しなければならない。

憲法改正には上下両院でそれぞれ3分の2の賛成が必要で、野党の協力がなければ成立しない。与党は22年4月までの成立を目指すが、先行きは不透明だ。

ペルーでは左派のカスティジョ大統領が10月、同国の天然ガスについて「国有化に関する法律を議会とともに起草したい。ペルーの生産物は国民に戻されるべきだ」と指摘した。与党内には鉱山企業への課税強化を求める声もある。

9月にはベリド首相(当時)が、主要な天然ガス田のカミセアについて「国有化も選択肢だ」と発言していた。

国際市場では、ワクチン接種が進んだ先進国を中心に需要が急回復し、供給不足や輸送網の混乱などを主因に資源価格の上昇がみられる。

資源価格を調査する英アーガス・メディアによると、電池燃料に使う炭酸リチウムの価格は11月中旬に1トン2万5250ドル(約290万円)と3カ月前の約2倍になった。米調査会社のS&Pグローバル・プラッツによると、液化天然ガス(LNG)の代表的なスポット価格は10月上旬、100万BTU(英国熱量単位)あたり56ドルと過去最高を更新した。

中南米では資源価格が上昇するたびに国有化の機運が高まる傾向がある。米テキサスA&M大のギレルモ・ガルシア准教授は「中南米は資源業界に歳入を依存する国が多く、国有化で財政基盤を強化しようとしてきた」と指摘する。過度な国有化は国外への利益の持ち出し制限にも波及しかねず、進出する外資は警戒を強めている。

(メキシコシティ=清水孝輔、サンパウロ=宮本英威)

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