日米企業、社会課題への姿勢に違い 経団連などが調査

【ニューヨーク=堀田隆文】日米企業は人権など社会課題に取り組む理由が違う――。経団連と英コンサルティング大手ブランズウィック・グループは21日、こうした内容の日米企業の意識調査をまとめた。米企業の多くが働きがいを示す「従業員エンゲージメント」を高めるためにも課題に取り組むとしたのに対し、日本企業はコンプライアンス(法令順守)のためとの姿勢が強く、情報発信も控えめという結果が出た。
経団連の米国事務所とブランズウィックが「日米グローバル企業の経営トップに対する意識調査」をまとめた。2021年8月~22年1月に日米企業それぞれ約10社の最高経営責任者(CEO)など首脳・幹部にインタビューしたところ、社会課題に対する両国企業の姿勢や認識の違いが浮かび上がった。
製造業や情報通信、金融、商社など、幅広い業種の企業幹部に聞き取り調査した。21日には日米交流団体ジャパン・ソサエティとの共催で、米ニューヨーク市内で発表イベントを開いた。
社会課題を巡っては、米国企業の多くが自社で働く従業員の期待に応え、共感を得るためにも取り組むとした。これに対し、日本企業では政府の指針や国連のガイドラインに従うためだとの姿勢が強かった。
企業の社会課題への取り組みに目を光らせる存在であるステークホルダー(利害関係者)のとらえ方についても、認識の違いが目立った。米企業が規制当局や従業員を含めた全方位を利害関係者ととらえるのに対し、日本企業は事業に直接関連する顧客や取引先などより狭い範囲に限りがちだった。
ダイバーシティー(多様性)についての取り組みにも差があった。日米企業とも多様性の確保を重要な社会課題ととらえる点は同じだったが、米企業が人種や性的指向、宗教も踏まえて多様性をとらえていたのに対し、日本企業は性別・年齢に焦点をあてるのにとどまる傾向があった。
ブランズウィックは今回の結果を踏まえ、米国でM&A(合併・買収)などを実施する日本企業に対し、「従業員の求める期待に会社がついていけているか、特に米国の従業員に対しては配慮する必要がある」と提言している。
日米企業の双方に詳しい、経営助言会社ロングサイト・ストラテジック・アドバイザーズのトビー・マイヤソン会長兼CEO(三菱UFJフィナンシャル・グループ社外取締役)は21日のイベントで、米国での人種や宗教などの社会問題への対応について「会社の価値観が何であるか鮮明にする必要がある。そのうえで、日本企業は米国出身の幹部社員に頼るべきだ」と話した。
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