米、仮想通貨業者に初の制裁 ランサム攻撃関与

【ニューヨーク=伴百江】米財務省は21日、企業などに対するランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃で暗号資産(仮想通貨)の支払いを要求したハッカーの取引に関与したとして、仮想通貨交換業者のスーエックス(Suex)を制裁の対象にしたと発表した。米政府が仮想通貨業者を制裁するのは初めて。東欧やロシアが拠点とされるスーエックスは、テロリストや違法薬物の密輸業者と同じ法的扱いとなり、米国民との取引が禁止される。
バイデン米政権はサイバー攻撃への対策を強化しており、今回の制裁はその一環となる。財務省によると、スーエックスの仮想通貨取引のうち40%はハッカーなど違法行為をする企業や個人が関与していたという。アデエモ財務副長官は「スーエックスのような業者はランサム攻撃で利益を得ようとする違法行為の重要な資金調達ルートとなっている」と指摘。制裁はランサム攻撃を取り巻く違法な仮想通貨取引のインフラを破壊する狙いがあると説明している。
制裁により、米国民がスーエックスと取引をした場合は罰金や禁錮刑などが科せられる可能性がある。今回の制裁では同社の社員など個人は対象にしていない。
ランサムウエアによる攻撃は近年急増している。米連邦捜査局(FBI)によると、2019年から20年にかけてランサム攻撃の件数は21%増加し、損害額は3倍以上に増えた。攻撃の大半は米企業や団体、個人を対象にしており、財務省は今回、ランサム攻撃のリスクに関する新たな指針も発表した。