米航空大手3社、そろって黒字 需要回復も原油高が重荷
【ニューヨーク=大島有美子】米航空会社の業績が急回復している。21日までに出そろったアメリカン航空など大手3社の2021年7~9月期決算はそろって最終黒字を確保した。純利益の合計は18億ドル(約2000億円、前年同期は96億ドルの赤字)だった。米国内を中心に旅行需要が戻り、売上高は計258億ドルと前年同期の3倍になった。今後も需要増を見込むなか、原油高に伴う燃料費の急騰が重荷となる。
「法人需要の回復と国境制限の緩和によって、向かい風は追い風に変わり始めた」。ユナイテッド航空のスコット・カービー最高経営責任者(CEO)は20日のアナリスト説明会で航空需要の回復ぶりをこう表現した。同社は新型コロナウイルス下で6四半期連続で最終赤字を計上したが、7~9月期に4億7300万ドルの黒字に転換した。
21日に決算を発表したアメリカンの純利益は1億6900万ドルだった。3社がそろって黒字となるのはコロナ下で初めてだ。

回復を主導したのは米国内線だ。アメリカンは国内線の旅客収入が19年7~9月期比16%減と、コロナ前の水準に近づいた。デルタ航空のエド・バスティアンCEOは「個人の需要は完全に19年の水準まで戻った」と手応えを示す。米国内線の回復が、アジア路線を中心とする国際線の低迷を補う構図は変わらない。
国際航空運送協会(IATA)が10月に公表した世界の航空需要見通しは22年も19年比で4割減の水準にとどまる見通しだ。そのなかで米国と欧州は22年にかけて往来が再開するとの期待が強まる。
「勇気づけられた。旅行に戻りたいという潜在需要があるのは明らかだ」(アメリカン航空のロバート・イソム社長)。ホワイトハウスは15日、米国に入国する外国人観光客向けの制限を11月8日から撤廃すると発表。アメリカンでは、発表から一晩で米ー英路線の予約が66%、米ーブラジル間が74%増えるなど顕著な反応が見られたという。低迷が続いていた法人の予約も「月単位で大幅に改善している」(同)という。
需要見通しには自信を深める一方で、各社は業績の先行きに慎重な見方を示す。アメリカンやデルタは21年10~12月期に再び最終赤字に転落する見通しだ。重荷になるのが燃料価格の高騰だ。10~12月の1ガロン当たりの燃料価格は7~9月より1~2割上がるとみる。
米投資会社コーウェンのヘレン・ベッカー氏は「燃料費の上昇分を航空券の価格に反映するには4~6カ月かかる。当面はコスト上昇分を相殺できるほどの売り上げ増は期待できず、利益を圧迫するだろう」と指摘する。
人手不足への対応も焦点だ。ある大手の客室乗務員は「いまは忙しい。新人のトレーニングが始まっており、12月には現場に入って負担が平準化するだろう」と胸をなで下ろす。ユナイテッドは21年1~9月で、19年の年間実績を上回る約1000人のパイロットを採用した。人件費や燃料費の増加と売り上げ回復のバランスをどう取るかが当面の業績を左右する。
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