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米国、ロシアの新START参加停止に反発 「無責任だ」

【ワルシャワ=中村亮】ブリンケン米国務長官は21日、ロシアのプーチン大統領が新戦略兵器削減条約(新START)の参加停止を決めたことに反発した。訪問先のアテネで「極めて残念であり、無責任だ」と語った。複数の米メディアが報じた。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長も「新STARTに関するきょうの決断で軍縮の枠組み全体が崩壊する」と語り、強い危機感を示した。

プーチン氏は21日の年次教書演説で「参加停止」に言及したが、具体的にどんな措置を講じるのかは明らかになっていない。米欧の出方を見極める可能性もあるが、相互不信が高まるのは確実だ。

新STARTは戦略核弾頭に加え、弾頭を攻撃目標へ運ぶ大陸間弾道ミサイル(ICBM)や戦略爆撃機、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の配備数を制限する。米ロ間に唯一残る核軍縮の枠組みになっている。

バイデン米政権は1月31日、ロシアが新STARTに基づく査察を拒み、2国間協議にも応じていないとして条約違反を認定した。制限対象の兵器について互いに年18回の実地調査を認めるが、米国はロシアが拒否していると主張した。

ボニー・ジェンキンス米国務次官は18日、日本経済新聞の取材でロシアが条約の上限を超えて核弾頭やICBMなどを配備した兆候はないと言及しつつ「我々はそれを確かめる必要がある」と強調し、ロシアに査察再開を求めた。

ジェンキンス氏はロシアが米欧にウクライナ支援削減などを迫るため新STARTを「取引材料」に使おうとしているとも批判した。「ウクライナ戦争と新STARTは切り離すべきだ」と唱えた。新STARTの履行状況と関係なく、ウクライナ支援を続けると明言した。

ロシアがウクライナ侵攻で手詰まり感が強くなるなか、核の脅しを再び強める可能性は排除できない。カーネギー国際平和財団のジェームズ・アクトン氏はウクライナ軍が同国領クリミア半島へ反転攻勢を強めると、ロシアが核兵器使用をちらつかせるリスクが高まると指摘する。

新STARTをめぐる相互不信は後継の枠組みに関する協議を一段と難しくする。新STARTは2026年に期限切れをむかえる。後継の枠組みが必要になるが、ウクライナ侵攻で米ロ交渉は中断している。

ジェンキンス氏は新STARTの対象外である中・短距離の核戦力も制限すべきだと重ねて主張した。全ての核兵器を査察する手法も議論する意向を示し「ロシアと長期間にわたって対話する必要がある」と語った。

「現時点で残された時間についてパニックになっていないが、期限は認識している」と言及し、交渉停滞への懸念を示唆した。

米国では共和党を中心にロシアの核戦力全体へ制限対象を拡大すべきだと主張してきたが、ロシアは長年にわたり拒んできた経緯がある。

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