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米ディズニー、異例のCEO再登板 動画配信テコ入れへ

(更新)

【シリコンバレー=佐藤浩実】米ウォルト・ディズニーが異例のトップ交代に動いた。20日、2021年に引退した中興の祖、ボブ・アイガー氏を最高経営責任者(CEO)に復帰させた。インターネット動画配信サービスの競争激化や経済減速といった逆風が強まるなか、71歳のベテランが再びエンターテインメントの巨艦企業のカジを取る。

取締役会がアイガー氏の再登板を決めた。同氏は05年から20年まで約15年にわたってCEOを務め、昨年末に会長を退任するまでディズニーに在籍していた。在任中にM&A(合併・買収)などで同社の売上高を約2倍に、時価総額を約5倍にするなど知名度は圧倒的に高い。今後2年にわたって再びCEOを担い、成長戦略を定めるとともに後継者の育成を進めるという。

20年2月からCEOを務めていたボブ・チャペック氏は即日退任した。同氏は任期半ばでの交代となった。取締役会がトップ人事を急いだのは、景気後退への懸念が強まるなかでディズニーの抱える課題の深刻度が日増しに強まってきたためだ。

一つは動画配信サービスだ。ディズニーはアイガー氏がCEOだった19年に「ディズニー+(プラス)」を始めた。会員を1億6420万人まで増やした一方で、規模の拡大を重視して作品制作や宣伝に投資を重ねた結果、直近の7~9月期は配信事業で過去最大となる約15億ドル(約2100億円)の営業赤字を計上した。

同事業は24年の黒字化を目標に掲げるが、競争の激しい北米での成長は頭打ちしつつある。12月に値上げを計画するものの、インフレが続くなかで消費者の離反を招く恐れもある。期待をかける広告付きプランも、一足先に世界展開に踏み切った米ネットフリックスをはじめ他社との競争はし烈だ。配信事業などの将来像を示しきれず、ディズニーの株価は年初来4割落ち込んでいる。

チャペック氏の経営姿勢もあつれきを生んでいた。11月、チャペック氏はコスト削減のため、マーケティング費用や出張費などの抑制と合わせて人員削減に乗り出す構えを示すメモを幹部に送った。一般の従業員への事前の説明はなく、報道で知る人も少なくなく、社内で不安が広がっていた。

取締役会長のスーザン・アーノルド氏はアイガー氏の指名理由として、「上級幹部や世界中の従業員から尊敬を集めている」とした。「スター・ウォーズ」のルーカスフィルムやマーベルなどの製作会社の買収や拡大を主導した同氏への社内からの信頼は厚い。同氏の過去の経営実績を評価して復帰を好意的に見る市場関係者も多い。

とはいえ、配信の競争環境や景気の減速感が変わるわけではない。テーマパーク部門でも相次ぐ値上げに不満をみせるファンも増えている。「私たちは『財布』と思われているのだろう」と、9月にディズニーのファンイベントに参加した30代の女性はこぼす。

アイガー氏は20日に就任すると従業員にメールを送った。「皆さんは不確実な状況に直面しても(もしかしたら特に不確実な状況に直面した時に)不可能を可能にする力を発揮する」。まずは動画配信事業のテコ入れと社員の士気向上などでアイガー氏の手腕が問われることになる。

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