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米SEC、気候リスク開示規則を提案 企業に排出削減促す

【ニューヨーク=宮本岳則】米証券取引委員会(SEC)は21日、上場企業に気候変動リスクの開示を求める新ルール案を提案した。投資家が開示情報を基に投資先を選別したり、温暖化ガスの削減を促したりできるようにする。もっとも米金融当局によるルール化には野党・共和党を中心に反対論が根強く、最終的な規則導入までに基準の見直しを迫られる可能性もある。

SECは21日、賛成多数で新しい開示ルール案を承認した。今後、外部から意見を募った後に最終規則をまとめる。大企業の場合、2023年度の排出量を24年にも開示する必要がある。バイデン米大統領から任命されたSECのゲンスラー委員長は同日、「企業が(気候変動に関連した)リスクをより効率的、かつ効果的に開示し、投資家の需要に応えるのを支援する」と述べた。

世界的に気候変動リスクの開示を企業に求める動きが広がっている。英国では22年4月以降、開示の義務付けが始まる。日本でも東証の最上位市場「プライム」に上場する企業は開示を求められる。上場時価総額で世界最大の米国が、開示ルールの導入に踏み切れば、温暖化ガス削減の取り組みに弾みがつくほか、環境に配慮した「ESG」投資にも追い風となる。

SECの新しい開示ルールでは、①気候変動リスクが経営に与える影響②企業のリスク管理体制③自社事業とサプライチェーン(供給網)における温暖化ガス排出量④気候変動に関連する目標や移行計画――などの公表を企業に義務付ける。SECは10年に公表したガイダンスで、年次報告書や届け出書に気候変動リスクを開示するよう求めていたが、強制力はなかった。

SECは企業側の負担にも配慮した。排出量に関しては、自社分(スコープ1)と購入電力・エネルギー分(スコープ2)の開示を義務付ける一方、サプライチェーンなど取引先の排出量(スコープ3)については、企業が「重要」と判断した場合に公表を求める。小規模企業は開示を免除された。開示した将来見通しが外れても訴訟対象にならない「セーフハーバー・ルール」も導入される。

新しいルールが導入されれば、企業は標準化された様式で、温暖化ガスの排出量などの開示を迫られる。これまでも企業が自主的に温暖化ガスの排出量を公表していたが、開示基準が統一されておらず、投資家は企業間比較をしにくかった。米大手運用会社ブラックロックはSECに提出した意見書の中で、開示基準をグローバルで統一するよう求めていた。

バイデン氏は20年大統領選挙の公約で、気候変動対策の強化を掲げていた。米連邦準備理事会(FRB)の金融規制担当副議長や米通貨監督庁(OCC)トップに気候変動対策に積極的な人材の登用を狙ったが、野党・共和党の強い反対にあい、連邦議会での承認を阻まれた。企業に対する気候リスク開示義務付けは、22年11月の米議会中間選挙に向けて、民主党支持者へのアピールにつながる。

エネルギー業界を支持基盤とする野党・共和党はSECの動きを批判してきた。気候変動政策を決めるのは連邦議会の仕事であり、SECの専門性や権限から外れていると主張する。トランプ前政権は気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱するなど環境問題は米世論を二分するテーマだ。新ルール導入阻止に向けて、共和党系の州司法長官などが訴訟を提起する可能性がある。

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