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米IT大手、自前半導体競う AI頭脳に最適化へ脱インテル

アップル、新型「iMac」に自社CPU

(更新)
アップルが自社で設計開発した半導体「M1」のイメージ

米IT(情報技術)大手が独自半導体の開発を競っている。米アップルは20日、5月後半に売り出すパソコン「iMac」に自社設計した半導体「M1」を搭載すると発表した。米グーグルもデータセンターで自社開発の半導体を活用する。各社のサービス向上のカギを握る人工知能(AI)の性能引き上げなどを狙い、パソコンで一時代を築いた米インテルの汎用品からの脱却を加速させている。

M1はCPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理半導体)をひとまとめにした「SoC(システム・オン・チップ)」と呼ばれる半導体だ。スマートフォン「iPhone」向けに開発した半導体と同じく、省電力技術に強い英アームのノウハウを取り入れた。

アップルによると、CPUやGPUの性能向上で写真や4K映像を円滑に処理でき、機械学習を最大3倍に高速化できるという。M1はiMac本体の厚さを11.5ミリメートルと薄くすることにも寄与した。iMacの価格は1299ドルから(日本では税込み15万4800円から)。

パソコンの「頭脳」を自社開発品に統一すると、アップルが新たな収益源として力を入れるアプリビジネスにも好影響を与えると見込まれている。理論上はiPhoneなど向けの約180万種類のアプリが新型iMac上でも動作するようになる。2019年に5190億ドル(約56兆円)に達したiPhoneのアプリ経済圏が、デスクトップパソコンにも広がる。

アップルは約2年かけてすべてのMacの半導体をM1に切り替える計画。同社は06年以降、インテルからMac向けにCPUの供給を受けてきたが、約15年に及んだ協業は幕を下ろす。

パソコンが普及した1990年代後半以降、半導体業界の主役はインテルのCPUに代表される汎用チップだった。スマートフォンの普及で潮目が変わった。画像処理やAIなどの計算を低消費電力でこなすため、アップルや中国の華為技術(ファーウェイ)が相次ぎ専用チップの開発に乗り出した。

AIの活用範囲が広がり、モバイル端末以外でも低消費電力への要求が強まると、パソコンやサーバーの領域でも専用チップが求められるようになった。汎用チップのシェアを奪い始め、データ処理に使われる半導体は多様化しつつある。特に重要性が高まっているのが、機械学習などの処理に特化したAI半導体だ。

アップルはM1に「ニューラルエンジン」と呼ぶAI専用の回路を持たせ、画像認識や音声アシスタント「Siri(シリ)」の性能を高めた。グーグルや米アマゾン・ドット・コムも自社開発のAI半導体をデータセンターに導入し、クラウドを介した各種サービスの性能向上と消費電力の削減につなげている。

ITの世界で米国と覇権を争う中国の企業も半導体の自社開発に力を入れている。中国ネット大手のアリババ集団は18年に買収した子会社を通じ、自社データセンター向けのAI半導体や、あらゆるモノがネットにつながるIoT向けのCPUを開発した。ファーウェイや百度(バイドゥ)も独自のAI半導体を開発している。

汎用のCPUは電子回路の微細加工技術をテコに処理能力を高めてきたが、近年はそのペースが鈍化。必要な投資規模も膨らんでいる。そのためAIや画像処理など特定用途に特化した半導体を自ら設計し、アームの技術を用いた低消費電力のCPUと組み合わせることで機器の計算効率を高める手法が広まっている。

インテルが微細化競争で足踏みするなか、「ファウンドリー」と呼ばれる半導体受託製造会社が台頭したことも、IT大手の半導体開発を後押ししている。アップルの独自半導体をつくるのは世界最大のファウンドリー、台湾積体電路製造(TSMC)だ。

TSMCの背中を追う立場になったインテルは3月、200億ドル(約2兆2000億円)を投じて米西部アリゾナ州に新工場を設け、半導体の受託製造事業に本格進出すると発表した。IT大手の半導体分野における存在感の高まりは、半導体産業の構造変化を一段と速める可能性がある。

(シリコンバレー=白石武志、東京=龍元秀明)

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