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最高益テスラ、半導体危機しのいだソフト開発力

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半導体不足が自動車業界の足かせとなるなか、米テスラが好業績を維持している。20日に発表した2021年7~9月期決算は売上高と利益がともに過去最高となった。自動運転用の人工知能(AI)や専用半導体を自社で設計・開発できるソフトウエア人材の厚みが、危機下で強さを発揮した。

営業利益率は14.6%に上昇

「重要な財務指標のそれぞれで新たな記録を達成し、企業として大きな進歩を続けている」。今決算でのアナリスト向けの電話会見を仕切ったザック・カークホーン最高財務責任者(CFO)は好決算に胸を張った。

世界各国・地域の環境規制を追い風に、売上高は137億5700万ドル(約1兆5700億円)と前年同期に比べ57%増えた。他の自動車メーカーへの温暖化ガス排出枠(クレジット)の売却収入は30%減の2億7900万ドルに落ち込んだものの、純利益は16億1800万ドルと4.9倍に伸びた。

米中で生産する小型電気自動車(EV)「モデル3」などの比率が高まったことで平均販売単価は前年同期比6%下落したが、それを上回るコスト削減で利幅を広げた。4~6月期に11.0%だった営業利益率は7~9月期に14.6%にまで高まり、自動車業界で高収益の目安とされる10%を安定して上回るようになった。

EVの半導体、ガソリン車の3~5倍

EVはガソリン車に比べ1台あたり3~5倍の半導体を使うとされ、株式市場は半導体不足はテスラにも影響すると見込んでいた。同社が10月2日に7~9月期の生産・販売実績(速報値)が過去最高を更新したと発表した際には、減速を見越していた機関投資家から驚きの声があがった。

テスラは自動運転のソフトを開発するだけでなく、米アップルの技術者を引き抜いて専用半導体を自社で開発するなどIT企業としての横顔も持つ。カークホーンCFOは会見で「半導体業界のあらゆる階層における専門知識を持つチームが、課題の克服において大きな違いを生んだ」と強調した。

エンジンやエアコンなど基幹部品ごとにマイコンを搭載して制御するガソリン車と異なり、テスラのEVは中央の電子制御ユニット(ECU)で車全体のシステムを集中制御している。ガソリン車に比べ構成は単純で、ECU以外の半導体は代替がききやすい特性もある。

自動車業界で半導体不足が深刻になった4~6月にはイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が自ら深夜までサプライヤーと連絡を取り合い、代替品の調達を指揮した。制御機器の半導体を入れ替える場合にはソフトの書き換えや安全性の試験など膨大な作業が生じるが、スタートアップならではのスピード感で乗り切った。

10月には部品不足などを理由に生産を止めていた高級SUV(多目的スポーツ車)「モデルX」の納車再開にもこぎ着けた。「まだ生産台数が少ないため、車種ごとのこだわりを捨てて部品の大部分を共通化している」。国内の自動車業界関係者はテスラの動きの速さに舌を巻く。

コロナ禍でも生産予測下げず

今回の半導体不足は新型コロナウイルス禍からの回復局面で自動車大手が一斉に挽回生産を急いだ結果、実需を上回る発注が重なって危機的な混乱を招いた側面がある。半導体業界からは需要に応じて柔軟に発注を変える「ジャスト・イン・タイム」の取引慣行への不満の声も漏れる。

テスラは新型コロナ禍でも年率50%超とする販売成長目標を取り下げず、増産基調を維持した。カークホーンCFOは電話会見で「サプライヤーとの間で生産予測を下げることはなかった」と強調。一貫性を欠いた調達対応を遠回しに批判した。

長期の成長計画に基づいて発注量を拡大するテスラは、成長を狙うサプライヤーにとっては魅力的な取引先になっている。すでに車載電池の分野ではパナソニックに加え、中国や韓国勢がテスラ車向けのシェアを奪い合う。「半導体メーカーが戦略的にテスラへの供給を重視している可能性もある」(外資系証券)

中国EV販売比率は50%に

7~9月期決算のけん引役となったのは、21年初に中国で現地生産車の引き渡しを始めた小型SUV(多目的スポーツ車)「モデルY」だ。テスラは地域別の販売台数を明らかにしていないが、調査会社マークラインズによると7~9月の中国販売台数は前年同期比3.9倍の約13万3200台となり、初めてテスラ全体の50%に達した。

19年に上海市内で稼働させた完成車工場の足元の生産台数は米国工場を上回り、欧州や北米、アジア各国への輸出拠点にもなっている。テスラは20日の決算発表資料の中で、米西海岸において深刻化する港湾の混雑や中国における計画停電が生産能力に影響を与えるとの注記も加えた。

年内にはドイツのベルリンと米南部テキサス州オースティンの郊外でそれぞれ新たな完成車工場が稼働を予定する。ピックアップトラック型EV「サイバートラック」などの新型車の量産開始も控え、サプライチェーンの複雑さは増す一方だ。テスラ技術陣の機動力がさらに試されることになる。

(シリコンバレー=白石武志、江口良輔)

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