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米人種差別、是正の壁厚く 黒人暴行死で有罪評決

元白人警察官の有罪評決が下り、歓喜する人々(20日、ミネソタ州ミネアポリス)=ロイター

【ニューヨーク=中山修志、野村優子】全米が注目した黒人男性の暴行死事件で元警察官に有罪評決が言い渡された。各地に広がった抗議運動は、政府や企業に人種差別や格差問題などの是正を促す圧力となっている。分断修復に向けた一歩につながるとの期待が出ているが、今回の事件後にアジア人への差別が悪化するなど米国の人種問題は根深い。

米中西部ミネソタ州ミネアポリスで2020年5月に起きた黒人男性ジョージ・フロイドさんの暴行死事件で、ミネソタ州地裁の陪審員は20日、元警官のデレク・ショービン被告に対するすべての罪で有罪評決を出した。

評決を聞くデレク・ショービン被告(右、20日、ヘネピン郡裁判所)=AP

ショービン被告は偽札を使った疑いでフロイドさんを拘束する際、手錠をかけられたフロイドさんの首を9分29秒にわたり膝で押さえつけ、死亡させたとして第2級殺人罪、第3級殺人罪、第2級過失致死罪に問われていた。

第2級殺人罪は最高で40年の禁錮刑が科される。量刑は判事が8週間後に言い渡すとみられ、ミネアポリスの刑事弁護士トム・ベイト氏は「ミネソタ州のガイドラインに基づけば禁錮15年が言い渡されそうだ」と指摘する。

有罪評決を受けて、ミネアポリスの裁判所を囲んでいたデモ隊からは歓喜の声が上がった。評決次第では全米を巻き込んだ暴動に発展するおそれがあり、評決前に州兵が派遣されるなど緊張が高まっていた。

フロイドさんが「息ができない」と繰り返し警官に訴える事件の映像は当時、SNS(交流サイト)で世界中に拡散され、警察の暴力や黒人の人種差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター(BLM=黒人の命は大切だ)」運動が全米に広がった。

事件は米国の人種差別の象徴とされ、20年には全米50州の2000以上の都市で大規模なデモに発展した。トランプ前大統領への批判にもつながり、米大統領選での敗北の一因になったとの見方もある。

米企業は人種差別と格差是正への取り組みを打ち出し、黒人など人種的マイノリティーの採用拡大や教育支援を約束した。人種差別的な発言をした企業経営者が解任されたり、差別につながる広告や商品を扱った企業が謝罪に追い込まれたりするケースも増えた。

20日、黒人男性フロイドさんの暴行死事件の裁判で最終弁論が行われるヘネピン郡政府センターを警備する州兵ら=ロイター

ただ、今回の有罪評決を人種差別や格差問題の解消につなげるのは容易ではない。米ニューヨーク大のキム・テイラー・トンプソン教授は「米国は長年、黒人への暴力と警察による殺人を許してきた。ショービン被告への有罪評決は大きな一歩だが、彼の行動を許してきた制度の改革は課題として残る」と指摘する。

バイデン米大統領は20日の演説で実力行使の規制など警察改革の必要性を訴えた。米議会下院は3月に警察改革法案と銃規制法案を可決したが、いずれも共和党の反対が強く、与野党が拮抗する上院での可決は難しい情勢だ。州や市が独自に警察改革に取り組む動きもあるが、足並みはそろっていない。

新型コロナウイルス危機を契機に、米国ではアジア人への差別も深刻化している。民間団体「ストップAAPIヘイト」によると、20年3月~21年2月に報告されたアジア系住民へのヘイトクライム(憎悪犯罪)は3795件で、カリフォルニア州とニューヨーク州での犯罪が6割弱を占めた。

カリフォルニア州立大の「憎悪・過激主義研究センター」の調査では、ニューヨークやロサンゼルスなど主要16都市の20年の憎悪犯罪は全体で1717件と19年比で7%減少した一方、アジア系を標的とした犯罪は同2.5倍に増えた。

米国の長い人種差別の歴史の中で、過去にも是正を求める機運が盛り上がったことがあったが、いまだに問題の解決には至っていない現実がある。

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