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米、巨大ITの追及緩めず 司法次官補に反グーグル弁護士

(更新)

【ワシントン=鳳山太成】バイデン米大統領は20日、司法省の反トラスト法(独占禁止法)担当トップに米グーグルへの批判で知られる弁護士を指名した。米連邦取引委員会(FTC)のカーン委員長を含め、競争政策を担う主要ポストにはIT(情報技術)大手に厳しい専門家をそろえる。独禁法を厳しく執行する方向へ転換する姿勢を鮮明にした。

この弁護士は、司法省の反トラスト局を率いる次官補に指名されたジョナサン・カンター氏。就任には議会上院の承認が必要だ。

司法省とFTCは反トラスト法を共同で所管する。カンター氏が就けば、カーン氏と共に独禁当局ツートップを形成する。FTCは委員5人の多数決で意思決定するが、司法次官補は組織の長として大きな権限を持つ。

カンター氏は巨大IT企業に挑む弁護士として名をはせてきた。米メディアによると、米マイクロソフトや飲食店口コミサイト「イェルプ」の代理人弁護士として、競合であるグーグルや米アップルなどの不公正な慣行を訴えてきた。

カンター氏は自身が設立した法律事務所の代表を務める。「反トラストの権利擁護者」を自称し、活動家の側面を持つ。オバマ元政権で司法次官補を務めたビル・ベア氏は「尊敬される経験豊富な弁護士だ。全国民に対して自由市場経済を機能させるという(バイデン)政権の公約に取り組むだろう」と話す。

デジタル時代に沿うように反トラスト法の改正を求める声もあるが、現行法でも対応可能だというのがカンター氏の主張だ。2020年10月のイベントでは「私たちには法律がある。勢いよく情熱を持って定期的に執行しよう」と述べていた。

司法省は米国のIBM、マイクロソフトといった巨大企業を独禁法違反で提訴してきた。01年に発足した共和党のブッシュ政権(第43代)を機に、独禁法にからむ大型訴訟は途絶えた。カンター氏は独占や寡占に寛容な当局の姿勢をやり玉にあげてきた。

トランプ前政権の司法省は20年10月、グーグルを独禁法違反の疑いで提訴した。カンター氏が就任すれば、23年にも公判が始まる久しぶりの大型訴訟を引き継ぐ。

バイデン氏は司法省の独禁法担当トップには穏健派を登用し、カーン氏のFTC委員長指名とのバランスをとろうとするとの見方もあったが、リベラル色を前面に押し出した。「巨大IT企業解体」を唱える民主党左派のウォーレン上院議員は「企業の強力な支配力を監視する戦いのリーダーだ」と、今回の人選を称賛した。

一連の人事は政策転換を表す。カーン氏、ティム・ウー大統領特別補佐官(競争政策担当)も巨大IT企業への規制を唱える。カンター氏を含め、米国で20世紀初頭に巨大企業の独占と戦った弁護士にちなみ「新ブランダイス派」とも呼ばれる。

バイデン氏は9日、企業間の競争を促す大統領令に署名した。野党・共和党からは規制強化が企業の競争力をそぐと懸念する声も聞かれる。だが、司法省とFTCはホワイトハウスの後押しを受け、大企業を積極的に訴えたり買収を厳しく審査したりして市場の寡占の問題に切り込んでいく可能性が高い。

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