「米航空システム障害は人為ミス」 連邦航空局が発表

【ニューヨーク=弓真名】米国内の航空路線で大幅な遅延を引き起こした11日の航空システム障害の原因について、米連邦航空局(FAA)は20日までに、下請け企業の従業員が「意図せずにファイルを削除する操作ミスがあった」と発表した。人為的なミスで、従業員の作為やサイバー攻撃があった証拠はないと説明した。FAA運営の抜本的な見直しを求める声が広がっている。
運航リスクや業務方式の変更などを管理する「NOTAM(ノータム)」と呼ばれる航空情報ネットワークシステムで障害が出た。米東部時間の11日午前7時頃、FAAは国内線について全便の出発を一時停止すると発表し、1万便以上が遅延するなど影響は全米の空港に及んだ。バイデン米大統領は同日、運輸省に早急な原因究明を指示した。
FAAによると、下請け企業の従業員がデータベースのバックアップ作業中に誤ってファイルを削除した。作為やサイバー攻撃は否定しており、調査を続ける構えだ。
関係者はFAAの組織やシステムの老朽化を問題視する。米航空大手のデルタ航空のエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)は13日の決算発表で「航空管制システムのアップデートが必要だ」と指摘した。FAAの予算を増やすなど、適切な措置をとるべきだと訴えた。
非営利団体アメリカン・エコノミック・リバティーズ・プロジェクトで航空分野を担当するウィリアム・マギー上級研究員は、FAAが「数年単位などではなく、ここ何十年も慢性的な資金不足に陥っている」と話す。
複数の米メディアによると、FAAは2022年3月から常任の局長が不在だ。バイデン氏は同年7月、局長候補にデンバー国際空港のフィリップ・ワシントンCEOを指名した。局長就任には上院の承認が必要だが、野党・共和党の反対で滞っている。与党・民主党のチャック・シューマー上院院内総務は15日、上院の迅速な承認にむけて働きかけるとの声明を出した。
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