米、ロシアとの首脳会談受け入れ 「侵攻せず」条件

【ワシントン=坂口幸裕】米ホワイトハウスは20日、緊迫するウクライナ情勢を巡り、バイデン大統領がプーチン・ロシア大統領との首脳会談を原則として受け入れたと発表した。ロシアがウクライナ侵攻に踏み切らないとの条件付きで、24日の米ロ外相会談で調整する。
フランス大統領府も、マクロン大統領がバイデン氏、プーチン氏とそれぞれ電話協議して米ロ首脳会談の開催を提案。両首脳が受け入れたと発表した。

米政府は声明で「我々は侵攻が始まる瞬間まで外交を追求する」と記した。ウクライナを囲むロシア軍は「すぐにでも本格的な攻撃ができる準備を続けているようだ」と指摘。侵攻すればただちに厳しい制裁を科す用意があると改めて警告した。
ブリンケン米国務長官は20日の米CBSテレビで、バイデン氏がロシアのウクライナ侵攻を阻止するためプーチン氏といつでも会談する用意があると明らかにしていた。「戦車や飛行機が動員され、侵攻が完全に始まるまではできる限りのことをやる」と述べた。
対面かオンラインかといった会談の形式は問わないとした。バイデン氏は18日に「プーチン氏が侵攻を決断したと確信している」と述べた一方で、外交での解決に望みをつないでいる。20日には、ホワイトハウスで国家安全保障会議(NSC)を開き、ウクライナの最新情勢について報告を受けた。

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ただ、米ロ首脳は12日に電話協議したばかりで、再び話す機会を設定したとしてもロシア軍の撤退など緊張緩和につながる成果を得られるかは見通せない。
ブリンケン氏は24日にロシアのラブロフ外相と対面で会談する予定だ。ロシアが2021年12月に示した欧州安全保障に関する合意案で意見を交わすとみられるが、米国はロシアがこだわる北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大停止の確約などを一貫して拒否してきた。
ロシアは米国が示した米欧とロシアの双方が軍事演習や地上配備型中距離ミサイルの配備を制限する妥協案に関心を示すものの、重要項目で折り合えるメドは立たない。
ロシア軍にウクライナ侵攻命令か 米報道
一方、バイデン氏の18日の「侵攻確信」発言の根拠を巡り、米メディアは20日、ロシア軍にウクライナ侵攻の命令が下ったとの情報を米情報機関が入手していたと報じた。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)などは「米情報機関が先週にロシア軍に侵攻命令が出たと把握し、バイデン氏はプーチン氏が侵攻を決断したと公表した」と伝えた。
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ロシア軍の現場の司令官が作戦の具体的な計画を立てている情報も得ているが、米政府関係者は「この命令は侵攻が確実だと意味するものではない」と話しているという。
ウクライナのゼレンスキー大統領は侵攻前であっても米欧が対ロ制裁に踏み切るべきだとの考えを示している。
ブリンケン氏は「抑止効果を失うので必要になるまで引き金を引きたくない」と語り、侵攻前に現在検討している大規模な金融・経済制裁を科すことに改めて否定的な考えを示した。
ロシアが侵攻すれば、安全保障や経済などに関するウクライナ支援を倍増するとも語った。米政府はこれまでも対戦車ミサイルのジャベリンや警戒艇、弾薬などを供与してきた。さらに強化する方針だが、NATOに加盟していないウクライナへの防衛義務はなく、軍派遣は否定する。
ロシアは20日、同日に終了予定だったベラルーシとの合同軍事演習の延長を決めた。終了後にベラルーシから撤収するはずだった推定3万人規模のロシア軍は展開を継続する。
ウクライナ北方のベラルーシ国境から100キロメートルほどに位置する首都キエフを攻撃するシナリオを想定しているとの見方があり、米政府は注視していた。
米ブルームバーグ通信によると、米国は同盟国にロシアが首都キエフだけでなく複数の都市を攻撃対象にしている可能性があると伝えた。北東部や南部も標的にしているおそれがある。

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