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米「世界のリーダー」復活難路 アジア外交、台湾焦点に

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バイデン米大統領は同盟関係の修復に意欲をみせた(20日、ワシントン)=ロイター

【ワシントン=永沢毅】バイデン米大統領は国際協調路線に回帰し、国際社会での指導力の回復に意欲をみせる。トランプ前政権の4年で米国の威信は傷つき、新冷戦とも呼ばれるほど対立を深める中国は影響力を高めた。脱炭素でも遅れが目立ち、バイデン氏がめざす「世界のリーダー」の復活は難路だ。

「米国を再び世界のリーダーにできる」。バイデン氏は20日の就任演説でこう力を込めた。「同盟関係を修復し、もう一度世界に関わっていく」とも語り、「米国第一」を掲げたトランプ氏の同盟軽視路線からの転換を強調した。

欧州など同盟国はひとまず方針転換を歓迎する。「共同作業を楽しみにしている」。トランプ氏と対立が際だっていた欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長はこうツイートした。

ただ米国のリーダー復活への道のりは険しい。そもそも「米国は世界の警察ではない」との宣言は2013年のオバマ元大統領の発言だ。背景には中国台頭による経済超大国の米国の揺らぎがある。名目国内総生産(GDP)は28年にも中国が米国を追い越すとの見通しもある。米国が世界の警察として軍事力を一手に担う余力は乏しくなった。

それを強引に推進したのがトランプ氏だった。北大西洋条約機構(NATO)加盟国の集団防衛に消極的な姿勢をちらつかせ、各国が「応分の負担」を担うべきだとの名目で同盟国に防衛費負担の増加を迫った。イラン核合意も一方的に破棄し、維持を求める当事国の英仏独と対立した。トランプ政権の4年間が残した不信は簡単にはぬぐえない。

有力民間シンクタンクの欧州外交評議会が2020年末に実施した世論調査では、米国に頼らずに欧州独自の防衛能力の強化が必要だと答えた市民は英独仏など欧州11カ国の平均で67%に及んだ。「米国はいつも欧州を守る」の10%を大きく上回る。表向きはバイデン政権を歓迎する欧州も米国のリーダー復帰には懐疑的なのが本音だ。

中国もそこを見透かしている。外務省の華春瑩報道局長は21日の記者会見でバイデン氏の大統領就任に「祝意」を表明。バイデン氏が就任演説で触れた「団結」は「いまの中米関係に必要なことだ」と強硬路線の修正へ秋波を送った。

当面の焦点は台湾だ。香港への統制強化を強めて「一国二制度」を形骸化させた中国は譲れない「核心的利益」と位置づける台湾への攻勢を強める。トランプ氏は武器売却や高官派遣を通じて台湾と接近を加速し、中国をけん制してきた。バイデン氏も20日の就任式に台湾の駐米代表を1979年の断交後では初めて招待した。台湾を巡る対立激化が再燃している。

中国が参加に意欲をみせる環太平洋経済連携協定(TPP)も難題だ。バイデン政権の下で多国間協調の貿易体制の回帰をめざすが、米国では自由貿易が国内雇用を奪ったとの不満がなお強く、TPPへの早期の復帰は見通せない。

脱炭素に向けた取り組みでも今や中国が主導権を握る。バイデン氏は環境インフラに4年で2兆ドルを投じ、米国製品を優先購入する方針を打ち出す。

ただ、国際エネルギー機関によると、中国における太陽光と風力による発電量は2019年に合計6190億㌔㍗時と、米国の約1.7倍の規模にのぼった。

エネルギーの「脱中東依存」を進めた米国はシェールオイルの開発などで18年に45年ぶりに世界最大の産油国となった。世界のリーダーとして脱炭素を加速させれば主力産業のエネルギー分野の雇用や経済への影響は避けられず、バランスが難しい。

まるわかりバイデン政権始動

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