鉄鋼の脱炭素で新国際枠組み 米USTR代表が検討表明 - 日本経済新聞
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鉄鋼の脱炭素で新国際枠組み 米USTR代表が検討表明

(更新)

【ワシントン=飛田臨太郎】米通商代表部(USTR)のタイ代表は19日、鉄鋼・アルミニウムの貿易を巡り、脱炭素化を進めるために新たな国際枠組みを検討すると表明した。中国など二酸化炭素(CO2)排出量が多い国からの輸入に高関税を課す仕組みが念頭にあるとみられる。2023年に同盟国と議論を加速する。

タイ氏は米シンクタンクで講演し「来年は我々が交渉中の鉄鋼・アルミ貿易において炭素排出量に基づく史上初の合意に向け、作業をさらに進める」と語った。米紙ニューヨーク・タイムズなどはUSTRがCO2排出量の多い国に高関税をかける新制度を欧州連合(EU)に提案したと報じている。

タイ氏は制度の詳細について言及しなかったが「反競争的で非市場的な慣行を制限し、脱炭素化を推進するパラダイムシフト(枠組み転換)となる」と強調した。中国が過剰に生産した安価な鉄鋼・アルミが世界の市場をゆがめている問題を指しているとみられる。

講演でタイ氏は「中国からの低価格な輸入品の急増で雇用が失われた。中国の不公平な政策と慣行は労働者の権利を抑圧し、環境基準を弱体化させた」と指摘した。

米紙報道などによると、新たな枠組みに参加する国は鉄鋼・アルミの生産によって生じるCO2排出量で一定の基準を満たすことを求められる。市場価格を押し下げる過剰生産の回避や国営企業の活動を制限することなども参加の条件にする見通しだ。

米国とEUは21年10月、鉄鋼やアルミの製造工程で発生するCO2を減らすために協力を深めることで一致した。USTRの提案を受けて、制度設計を協議する。

EUは13日、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置(国境炭素税)を導入することで合意した。鉄鋼とセメント、アルミ、肥料、電力、水素を対象とし、今後拡大を検討する。EUの国境炭素税はUSTRが検討する仕組みと類似点があり、議論のたたき台となる可能性がある。

米中は11月の首脳会談で気候変動対策で対話を継続すると足並みをそろえた。ただ、中国が即座に鉄鋼・アルミ生産に関わる環境対策を講じて排出基準を満たすのは難しい。新たな国際枠組みに参加できない公算が大きく、中国が反発するのは必至だ。

中国は米国が先端半導体で導入した対中輸出規制を巡り、世界貿易機関(WTO)に提訴したばかりだ。米中が歩み寄れる余地のある気候変動対策でも亀裂が生じる懸念がでてきた。

USTRは鉄鋼・アルミの新しい枠組みへ日本などにも参加を求めるとみられる。中国との経済関係が深い国々には難しい選択となる。

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