バイデン氏「価値観共有する国と供給網」 韓国で演説
21日に米韓首脳会談、北朝鮮など議論へ

【ソウル=坂口幸裕、甲原潤之介】バイデン米大統領は20日夕、大統領専用機で韓国に到着した。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と同日に訪れたサムスン電子の半導体工場で演説し、価値観を共有する同盟国などとサプライチェーン(供給網)構築で協力する重要性を訴えた。中国への経済的な依存を引き下げる狙いがある。
21日の米韓首脳会談では核実験・ミサイル発射の構えをみせる北朝鮮への対処も主要議題になる。バイデン氏は22日まで韓国に滞在し、22~24日に日本を訪れる。23日に岸田文雄首相との最初の本格的な対面会談に臨む。

ロシアによるウクライナ侵攻が続くさなかのアジア訪問で、米国が安全保障と経済の両面でインド太平洋地域に関与する姿勢を明確にする。
24日には日米とオーストラリア、インドの「Quad(クアッド)」首脳会議を開く。4カ国の思惑が一致する対中国政策だけでなく、インドが経済・安保で歴史的に深い関係を持つロシアへの対応も話し合う。
バイデン氏は20日の演説で、ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ「我々と価値観を共有しない国に経済や国家安全保障で依存しないよう重要な供給網を確保する必要性を浮き彫りにした」と訴えた。
「韓国のような価値観を共有する緊密なパートナーと協力し、同盟国やパートナーから必要なものをより多く確保し、供給網の強靱(きょうじん)性を強化することが重要だ」とも指摘。「そうすることで両国はともに繁栄し、21世紀の競争で優位に立てる」と強調した。
尹氏は「韓米関係が先端技術と供給網協力を基盤にする経済安全保障同盟に生まれ変わることを希望する」と表明した。
バイデン政権は産業の基盤となる半導体の不足で生産の混乱を招いた経験を踏まえ、戦略物資の安定調達につなげる体制づくりを急ぐ。米インテルやサムスンは米政府の補助金を受けて米国内に半導体工場を建設する計画だ。米国内の生産体制の強化に加え、同盟国を中心に供給網を築く狙いがある。
バイデン氏が22日から日本を訪れるのに合わせて新たに発足させる「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を巡っても米韓首脳は21日に意見を交わす。韓国も供給網やデジタル分野などで連携をめざすIPEFに参加する。
首脳会談では、北朝鮮の抑止に向けて圧力を強めて非核化への具体的な行動を迫る見通しだ。目玉になりそうなのが2017年を最後に停止している野外での合同軍事演習の再開での合意だ。18年の米朝首脳会談以降は主にコンピューターを使った机上のシミュレーションにとどめていた訓練を正常化させる。
17年までは米韓両軍30万人以上が参加する訓練を実施していた。米朝間の非核化交渉が本格化した18年に規模を縮小し、19年以降は中止した。北朝鮮との対話を重視した文在寅(ムン・ジェイン)前政権の意向も働いた。
尹氏は米韓同盟を外交・安全保障政策の基軸に掲げる。5年ぶりとなる韓国の保守政権発足に対する米国の期待は大きく、日本を含む3カ国の安保協力を再構築する。
バイデン氏に同行したサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は19日、大統領専用機で記者団に「北朝鮮が対話を拒む限りは圧力をかける路線を続ける」と警告した。近く核実験や弾道ミサイル発射に踏み切る懸念を示し「北朝鮮のさらなる挑発行為は米韓や日韓、日米韓の協力を強めるだけだ」と述べた。
一方、北朝鮮の非核化をめぐり「北朝鮮に手段を講じる用意があれば我々も手段を講じる用意がある」と話した。これまで北朝鮮は米側の対話の呼びかけに応じていない。

岸田文雄首相との日米首脳会談や日米豪印による「Quad(クアッド)」首脳会議、来日前の尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領との会談などに関する最新のニュースと解説をまとめました。