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米軍のアジア基金、議会で批判相次ぐ 対中シフトで混乱

オースティン米国防長官は軍人として長年にわたり中東地域でテロとの戦いに関与したが、インド太平洋地域での経験は乏しい。=ロイター

【ワシントン=中村亮】米軍が対中国シフトを進めるために創設した基金に対し、米議会で批判が相次いでいる。最優先課題である米領グアムでのミサイル防衛システムの整備費を過小要求し、基金の目的と関係の薄い政策を盛ったからだ。中国への対応策作りを巡るバイデン政権内の混乱が浮き彫りになった。

議会で批判が強まっている基金は「太平洋抑止イニシアチブ(PDI)」。中国は有事に大量の高精度ミサイルを使い、小笠原諸島からグアムを結ぶ第2列島線内に米軍を近づかせない戦略をとるとされる。PDIは基地のインフラ整備や同盟国との軍事演習などを通じて中国からの攻撃を回避し、反撃する態勢をつくる目的で1月に創設。バイデン政権は5月末に公表した2022会計年度(21年10月~22年9月)の予算教書でPDIに51億㌦(約5600億円)を要求した。

ただ、議会では中国の攻撃対象として想定されるグアムのミサイル防衛への予算が過小との批判が多い。政権はグアムのミサイル防衛に1.2億㌦を要求したが、インド太平洋軍の要望を大きく下回る。

米軍は予算教書に盛り込めなかった政策のリストを議会に提出し、議会の予算編成プロセスで復活を促すことができる。日本経済新聞が入手した政策リストによると、インド太平洋軍はグアムのミサイル防衛に2.3億㌦を上乗せするよう求めた。予算教書はインド太平洋軍の要望の3分の1しか反映しなかったことになる。

戦闘機や艦船の開発・調達に向けた予算計上を巡っても批判がある。PDIは戦闘機や艦船そのものを主要な投資項目とはしていない。PDI創設を主導した民主党のジャック・リード上院議員らは20年5月、米メディアへの寄稿で「ステルス戦闘機をどれだけ購入しても、使う基地のミサイル防衛が脆弱で、迅速に戦闘機を修理できず、燃料や弾薬が不足すれば無意味だ」と指摘していた。

民主党のメイジー・ヒロノ上院議員は6月10日の軍事委員会の公聴会で、艦船調達などをあげて「どうして大半の予算要求がPDIで取り組むとした項目と関係のないものになっているのか」と疑問を呈した。オースティン国防長官は「私のスタッフが議会と協力して食い違いをいま洗い出しており調整していく」と説明。予算教書に不適切な項目が盛り込まれていたと事実上認めた。

元国防総省高官のエルブリッジ・コルビー氏はPDIをめぐる混乱について「中国対抗に向けた具体策について議論が尽くされていないことを示している」と指摘する。バイデン政権は中国を「唯一の競争相手」とみなすが、政策の優先順位に加えてインド太平洋地域での陸海空の各軍や海兵隊の役割分担などが定まっていないとみる。米軍内には台湾海峡の有事について「大半の人が考えているよりもはるかに近い」(インド太平洋軍のジョン・アキリーノ司令官)との見方があり、具体策の詰めは急務だ。

元米軍高官はオースティン氏の指導力不足を指摘する。オースティン氏は軍人として長年にわたって中東地域でテロとの戦いに関与したが、インド太平洋地域での経験は乏しい。

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