米「増税は長期で検討」 イエレン氏表明、50年債発行も
財務長官就任へ上院委が公聴会

【ワシントン=河浪武史】米次期財務長官に指名されたイエレン前米連邦準備理事会(FRB)議長は19日の上院公聴会で「目先は財政出動による経済回復に注力し、増税は長期的に検討していく」と述べた。バイデン次期政権は1.9兆ドルの追加財政出動案を表明し、インフラ投資など成長戦略も検討する。財源確保が焦点になるが、イエレン氏は50年債など超長期債の発行を検討するとも表明した。
イエレン氏は19日、上院財政委員会で指名承認公聴会に臨んだ。20日に就任するバイデン次期大統領は、家計に1人最大1400ドルの現金給付案などを提示。イエレン氏も新型コロナウイルス危機からの早期脱却へ「大きな行動が必要になる」と主張し、議会に迅速な財政出動を求めた。
同氏は財務長官としてバイデン政権の経済政策の主導役を求められる。公聴会では「目先はワクチン普及や雇用、中小企業の救済策などに注力し、第2弾としてインフラや研究開発など米経済の競争回復に投資していく」と述べた。
米連邦政府は既に過去最大の27兆ドルの債務を抱えており、財源確保が大きな課題となる。バイデン氏は選挙戦中に21%の連邦法人税率を28%に引き上げ、富裕層の所得課税も強化するとしてきた。イエレン氏は「目先は増税に焦点を当てていない。インフラ投資など長期戦略と一体で検討する」と主張。景気回復を優先し、拙速な課税強化を避ける考えを強調した。
イエレン氏は「歴史的な低金利環境にあり、短期的にはコロナ対策に充てる財政面の余裕はある」とも強調した。米10年物国債利回りが1%程度と低位で推移しているためだが、将来的には「金利上昇の可能性を考慮する必要がある」とも指摘した。国債の利払い負担を抑えるため、50年債など超長期債の発行を「前向きに検討していく」と述べた。
イエレン氏は2014年から4年間、女性としては初めてFRB議長を務めた。財務長官人事は上院の承認が必要になるが、超党派の賛成多数で通過する見通しだ。同ポストでも初の女性登用となる。同氏は労働政策を専門とする経済学者で、バイデン氏は財政出動によるコロナ危機下の雇用立て直しをイエレン氏に期待する。

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