ミャンマーデモで211人死亡 国連「収拾つかなくなる」

【ニューヨーク=吉田圭織】国連のミャンマー常駐調査官代行のアンドリュー・カークウッド氏は19日の国連本部での記者会見で、ミャンマーで国軍がクーデターを起こした2月1日以来、少なくとも抗議デモ参加者211人が国軍側の鎮圧で死亡したと明らかにした。国連は「さらに状況が悪化し、収拾がつかなくなる可能性がある」として警戒を強めている。
国連のグテレス事務総長は同日発表した声明で「国軍が継続している残忍な暴力を強く非難する」と厳しく批判した。国軍は人権侵害の停止や民主主義への復帰を求める安全保障理事会を無視しているとして「強硬で一致した国際的な対応が必要だ」と訴えた。安保理は10日、国軍による暴力の行使を非難する声明を出したが、中国やロシアなどミャンマーの内政問題だとする国々と欧米の理事国の意見の隔たりで法的拘束力を持つ制裁決議などの対応は難しいとされている。
カークウッド氏は、死亡したデモ参加者の多くは「頭をスナイパーに狙撃されて死亡した」と深刻な状況を強調した。死亡したうちの少なくとも15人が子供だったという。同氏によると、少なくとも2400人がデモ参加の疑いで拘束されており、拘束された人に対する性的暴力も報告されている。
新型コロナウイルスの流行が続くなか、感染拡大を招く懸念も浮上している。カークウッド氏は「公衆衛生制度は事実上、崩壊している」とし、クーデター発生後には国軍が36の病院を占拠し、新型コロナ検査や治療も停止していると指摘した。燃料不足や交通の混乱で食料価格も過去1カ月で2割上昇したとして「食糧危機に進展している可能性がある」と警告した。
ミャンマー国軍は2021年2月1日、全土に非常事態を宣言し、国家の全権を掌握したと表明しました。 アウン・サン・スー・チー国家顧問率いる政権を転覆したクーデターを巡る最新ニュースはこちら。