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大規模サイバー攻撃、米ロ対立の新たな火種に

米民主「事実上の宣戦布告」、ロシア政府「関与せず」

ポンペオ米国務長官は米政府高官として初めてロシアの関与に触れた=ロイター

【ワシントン=中村亮、モスクワ=小川知世】米政府機関などが大規模なサイバー攻撃を受けた問題を巡り、トランプ政権がロシアの関与を断定した。米議会では「戦争行為」とみなし、強力な報復措置を講じるよう求める声が出る。バイデン次期米大統領も対ロ強硬に傾きやすく、今回のサイバー攻撃が米ロ対立の新たな火種に浮上してきた。

ポンペオ米国務長官は18日、米メディアのインタビューで実行犯が第三者のソフトウエアを使って米政府内のコンピューターシステムにプログラムを埋め込み、ハッキングを試みたと指摘。「この活動を行ったのはロシア人だと非常に明確に言えると思う」と述べた。米政府高官が実行犯を公の場で名指しするのは初めて。

米CNNテレビによると米政府のサイバー対策担当者は数カ月前に政府のネットワーク内で不審な活動をつかんでいたが、攻撃対象の範囲や高度な手口を明確に把握できたのは12月に入ってからだったという。国務省や国防総省、国土安全保障省、エネルギー省といった米主要省庁が攻撃を受けた。

米マイクロソフトは米国に加え、英国やカナダ、ベルギー、イスラエルなど計8カ国の40超の政府機関や企業が攻撃対象だと明らかにした。米政府が攻撃の全容をめぐる調査を完了するには数カ月かかるとの見方がある。

ロシア政府は関与を一貫して否定している。ペスコフ大統領報道官は14日、「関与していない」と述べ、米国が根拠なくロシアを非難していると反発した。ロシアはサイバー空間での連携を訴え、攻撃疑惑をかわそうとしてきた。プーチン大統領は9月下旬、米国にサイバー攻撃で選挙に干渉しないことを互いに保証し、衝突を避けるための協定を結ぶように提案した。ペスコフ氏は米国が提案に応じていないと非難した。

米議会は党派を超えて今回のサイバー攻撃を「戦争行為」とする見方が出ている。民主党指導部のディック・ダービン上院議員は「米国に対する事実上の宣戦布告だ」と非難。バイデン氏の最側近の一人であるクリス・クーンズ上院議員も「戦争と認定できる攻撃的行為と今回の件を区別するのはとても難しい」と指摘した。

共和党でも重鎮のミット・ロムニー上院議員はサイバー攻撃を「ロシアの爆撃機が見つかることなく我が国の全土に繰り返し飛来したようなものだ」と懸念を表明した。マルコ・ルビオ上院情報特別委員長代行も「米国は反撃する必要がある。制裁だけではない」と強調した。サイバー分野での報復攻撃などを促す発言とみられる。

議会が強く反発するのは、安全保障の危機に直結しかねない外国政府による組織的攻撃である可能性が高いためだ。ハッカー集団は米エネルギー省傘下で核兵器を管理する国家核安全保障局に加え、核兵器開発を担うサンディア国立研究所やロスアラモス国立研究所のネットワークにアクセスした可能性がある。国務省や国防総省も安保をめぐる機密情報を扱っている。

サイバー攻撃は実行犯や被害の実態が公にはわかりにくい。軍事報復を受けることなく、平時から安保情報を収集し有事の際に活用して敵を圧倒する戦略を中ロが描いていると米政府や議会は警戒を強めている。軍事作戦と非軍事作戦の境界線を曖昧にするサイバー攻撃は相手国の疑心暗鬼を生みやすく、報復の応酬につながる恐れがある。

これまでに米政府へのサイバー攻撃で最大の被害を及ぼしたとされたのは、2015年ごろの個人情報流出だ。米連邦人事管理局がサイバー攻撃を受け、政府関係者ら約2200万人の個人情報が盗まれた。実行犯との疑いが出た中国がスパイ活動に活用し機密情報を盗むとの懸念が強まったが、必ずしも安保危機に直結するものとはみられなかった。

トランプ氏は19日、ツイッターで「ハッカー攻撃について実態よりもフェイク・ニュース・メディアが過大に報じている」と主張した。トランプ氏はロシアとの関係改善を掲げており、非難を避けた形だ。AP通信によると、ホワイトハウスは18日午後にロシアを非難する声明を準備したが発表を直前で取りやめた。トランプ氏が中止を指示した可能性がある。

サイバー攻撃はバイデン氏のロシア政策を複雑にする。バイデン氏は「悪意のある攻撃を仕掛けた者には相当の代償を払わせる」と断言している。サイバー攻撃を通じたロシアによる16年の大統領選への介入を一時否定したトランプ氏に対し、バイデン氏はロシアに弱腰だと批判してきた。議会の意向も踏まえ、ロシアに厳しい対抗措置を講じざるを得ない。

一方、21年1月20日の政権発足直後にはロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の延長交渉がバイデン政権の外交政策で喫緊の課題になる。同条約は同2月5日に期限切れを迎え、交渉の時間は極めて少ない。バイデン氏は他国への核拡散を防止するためにも延長を訴え、軍縮分野ではロシアと協力する考えを示していた。

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