米「ウクライナ侵攻懸念」 ロシアが隣国で軍事演習準備

【ワシントン=坂口幸裕】米政府高官は18日、ロシア軍が隣国ベラルーシで軍事演習の準備段階に入ったとの見方を示した。ロシアはウクライナとの国境周辺に10万人規模の軍部隊を展開させており、緊張がさらに高まりかねない行動だ。バイデン政権はウクライナ侵攻に向けた布石になる可能性があるとして警戒を強めている。
ロイター通信によると、ロシアとベラルーシの両政府は18日、2月に外部からの攻撃に対処する合同軍事演習を実施すると発表した。ロシア軍は今月17日以降、ベラルーシに到着。ベラルーシ西部のポーランドと北部のリトアニア、南部のウクライナそれぞれの国境付近で訓練するという。ポーランドとリトアニアは北大西洋条約機構(NATO)に加盟する。
ロシアのプーチン大統領とベラルーシのルカシェンコ大統領は2021年12月下旬に会談し、22年春にベラルーシ領内で合同軍事演習を実施する方針を示していた。
ホワイトハウスのサキ大統領報道官は18日の記者会見で「ロシアがいつ攻撃を開始してもおかしくない」と語った。米政府高官は18日、記者団に「このタイミングは注目に値する。ロシアが北部からウクライナに侵攻する意図をもち、演習名目でベラルーシに軍隊を駐留させる懸念がある」と述べた。
ベラルーシは2月後半に計画する国民投票で、憲法改正案の是非を問う予定だ。同高官は「改憲案はロシアがベラルーシに軍隊を駐留させる道を開くと解釈できる文言を含む。ロシアの核戦力を配備する計画かもしれない」と話し、欧州の安全保障の脅威になるとの見方を示した。
ブリンケン米国務長官とロシアのラブロフ外相は21日にスイス・ジュネーブで会談する。膠着しているウクライナ情勢や欧州の安全保障体制について協議するが、ロシアが要求するNATOの東方拡大停止の確約など合意できる余地は乏しい。
米ロの協議に先立ち、ブリンケン氏は19日、訪問先のウクライナの首都キエフでゼレンスキー大統領と会談した。国務省の声明によると、ロシアがウクライナを再び侵攻すれば同盟国などとロシア経済に壊滅的な代償を課すと伝達。中東欧を念頭に最前線の国でNATOのプレゼンスを強化するとともに、ウクライナへの防衛支援をこれまで以上に拡充すると改めて強調した。ウクライナの主権と領土保全に対する米国の揺るぎない関与を訴えた。
その後に訪れるドイツではベーアボック外相と会談する。ロシアがウクライナに侵攻した場合の対抗措置を話し合う。独ロを結ぶ新たなガスパイプライン「ノルドストリーム2」への対処がテーマになる見通しだ。
ロシアは硬軟両様で米国を揺さぶる。ロシア連邦保安局(FSB)は14日、米企業などにランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃をしかけて金銭を強要したとしてロシアのハッカー集団のメンバーを拘束、起訴したと発表した。米国は石油や食肉の供給などで悪影響が出たのを受け、ロシアに対応を要請していた。
米ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長は18日の米CNN番組で、ハッカー拘束に触れ「ロシアの大統領が米国にメッセージを送っているのは明らかだ。ウクライナへの侵攻は避けられないものではない」と指摘した。