米国、トルコへの戦闘機売却が膠着 議会が反対

【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領が約束したトルコへのF16戦闘機の売却が滞っている。承認に必要な米連邦議会で与党・民主党の有力議員がトルコの人権対応などを理由に反対姿勢を崩していないためだ。トルコがカギを握る北欧2カ国の北大西洋条約機構(NATO)加盟にも波及するおそれがある。
トルコのチャブシオール外相は18日、訪問先の米首都ワシントンでブリンケン国務長官と会談した冒頭でF16の問題を取りあげた。「トルコだけでなく、NATOや米国にとっても重要だ。承認されるのを期待している」と話した。
外相会談後に両国が発表した共同声明では「F16を含むトルコと米国の防衛パートナーシップの強化について議論した」と明記するにとどまった。
米国務省のプライス報道官は18日の記者会見で、ウクライナ紛争でのトルコの役割を評価した上で「トルコが直面する安全保障上の懸念に対処するために必要なものを手に入れられるようにしたい」と強調。トルコや米議会と協議を続ける意向を示した。
トルコは米国が反対するロシア製ミサイル「S400」を購入し、米国が報復として次世代戦闘機「F35」の開発プロジェクトからトルコを排除。トルコはF35に代わる措置として米国に新型のF16の売却を求めてきた経緯がある。
バイデン政権はロシアによるウクライナ侵攻を受け、2022年6月にトルコへの安保協力がNATOの防衛力強化につながるとの理由から「トルコの戦闘機の近代化を支持する」と打ち出した。バイデン氏はトルコのエルドアン大統領と会談した後「売却すべきだ」と述べた。
米議会がトルコに売却を認めるかは予断を許さない。米メディアは13日、上院外交委員会のメネンデス委員長(民主党)がF16の売却に関し「強く反対する」と表明したと報じた。エルドアン氏について「国際法を損ない、人権と民主主義を無視している。信頼できる同盟国としてあるべき行動をとるまで売却を承認しない」と断言した。
米国の対応がスウェーデンとフィンランドのNATO加盟にも影を落とすリスクがある。米国からF16を調達できるメドが立ち、トルコが両国の加盟を賛成する方針に転換する一因になったからだ。
NATOへの新規加盟には全加盟国の支持が必要だ。米メディアによると、トルコは2カ国の加盟批准をF16売却の条件にすべきではないとの立場だ。トルコが批准してもメネンデス氏らが反対姿勢を改める保証はなく、米政府は難しいかじ取りを迫られている。

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