バイデン大統領、中国が台湾侵攻なら米軍が防衛

【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領は18日放送の米CBSテレビのインタビューで、中国が台湾を攻撃すれば米軍が防衛すると明言した。中国が台湾へ武力行使した場合の対応を明確にしない歴代政権の「あいまい戦略」の修正と受け止められかねない発言だ。
番組の司会者から「米軍は台湾を守るのか」と問われ、バイデン氏は「はい(YES)、もし実際に前例のない攻撃があれば」と答えた。「(ロシアが侵攻しても派兵しなかった)ウクライナと違って、米軍は中国の侵攻があった場合に台湾を守るということか」と聞かれても「はい」と表明した。
ホワイトハウスの報道担当者は19日、日本経済新聞に「バイデン氏は東京を訪れた際を含め、以前にもこのような発言をしている。その時も米国の台湾政策に変更はないと明確にしており、それは今も変わっていない」と説明した。
バイデン氏は5月下旬の東京での記者会見で、中国が台湾に侵攻すれば台湾防衛のために軍事的に関与すると言明した。大統領就任後の2021年8月と同10月にも同じ趣旨の発言をして当局者が火消しに追われた経緯がある。
日本や韓国、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国と異なり、米国にはウクライナと同様に台湾を防衛する義務はない。
8月上旬のペロシ米下院議長の訪台に反発した中国は台湾の周辺海域に弾道ミサイルを撃ち込むなど軍事圧力を強めている。バイデン氏の発言で中国側がさらなる強硬姿勢をとるおそれがある。
中国外務省の毛寧副報道局長は19日の記者会見で「台湾独立分裂勢力に誤ったシグナルを送ることになる」として「強烈な不満と断固とした反対」を表明した。すでに米国側に抗議の申し入れをした。毛氏は「いかなる国家を分裂させる行動も絶対に容認しない。あらゆる必要な措置をとる選択肢を用意している」と強調した。
米国は「中国本土と台湾は不可分」という中国の立場に異を唱えない一方、台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を掲げる。
バイデン氏は18日放映のインタビューで「一つの中国政策があり、台湾は自らの独立について自身で判断する。我々は独立を促していない。台湾が決めることだ」と述べた。
1979年制定の台湾関係法では米国が台湾の自衛力維持を支援すると定め、武器売却を続けてきた。中国抑止とともに、台湾の一方的な独立も認めない現状維持が地域の安定に寄与するとの判断がある。
- 【関連記事】バイデン氏、新型コロナ「パンデミックは終わった」