Netflix利用者初の減少 株価2割急落、広告導入を検討

【シリコンバレー=佐藤浩実】米ネットフリックスが19日発表した2022年1〜3月期決算は売上高が前年同期比10%増の78億6776万ドル(約1兆円)だった。純利益は同6%減の15億9744万ドル。3カ月ごとに開示している会員数が過去10年で初めてマイナスに転じ、4~6月期も減少が続くとみる。インフレが進むなか消費者が娯楽支出に慎重になっており、競争激化やロシア事業の中断も響いた。
19日の米国市場の時間外取引でネットフリックスの株価は急落し、終値を一時26%下回る場面があった。

3月末の会員数は世界で2億2164万人で、21年12月末と比べて20万人減った。比較可能な12年以降で、会員数の伸びがマイナスに転じたのは初めてだ。ウクライナ侵攻を機にロシア事業を中断し、70万人分の減少要因になったという。四半期決算に合わせて公開している株主への手紙で、ロシアの影響がなければ「50万人の増加を保てた」と説明した。
4~6月も200万人減予想
それでも、予想していた250万人の拡大には遠く届かなかった。1月に値上げした北米の会員数が3カ月で64万人減ったほか、中南米も同35万人のマイナスだ。日本を含むアジアで109万人増えたのを除き、多くの地域で成長の壁に突き当たった。4~6月期も、世界の会員数が3月末と比べて200万人減るとみている。

ネットフリックスはアカウント共有などで料金を払わずに利用している層が「1億世帯以上」おり、こうした層の存在が成長の阻害要因になったとみる。さらに過去3年ほどで動画配信サービスへの参入企業が急増し、競争が激しくなっていることも指摘した。インフレなどマクロ経済への懸念も逆風になった。
アカウント共有などの課題はかねて存在していたが「新型コロナウイルス下で動画配信サービスに強い追い風が吹き、最近まで見えにくくなっていた」(ネットフリックス)。20%程度の営業利益率を保ちつつ、不正利用への対処を厳しくするなどして売り上げ成長の再加速をめざす。
広告付き割安プラン、導入を検討
事業モデルの抜本的な見直しも始める。リード・ヘイスティングス共同最高経営責任者(CEO)は19日の投資家向け説明会で、広告をつけることで月々の料金を抑えるプランの導入を検討していると明らかにした。「1~2年かけて考えていく」(ヘイスティングス氏)。広告がないことを売りにしてきた同社にとって、大きな方針転換となる。
ネットフリックスの株価は19日の終値時点ですでに、直近のピークだった21年11月比で5割落ち込んでいた。株式市場では月額制の会費に依存する事業モデルの限界を指摘する声が強まっていた。
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