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株乱高下で米公聴会 ロビンフッドCEO、取引制限を謝罪

(更新)
株価乱高下を巡って、米議会下院の金融サービス委員会はオンラインで公聴会を開いた=ロイター

米議会下院の金融サービス委員会(委員長=民主党のウォーターズ議員)は米東部時間18日正午(日本時間19日午前2時)から米ゲーム専門店ゲームストップ株問題に関する公聴会を開いた。1月下旬、米オンライン掲示板「レディット」でやり取りした個人がスマホ証券ロビンフッド・マーケッツなどを舞台に「共闘」買いし、ヘッジファンドによる空売りの買い戻しを巻き込んで株価が乱高下した。公聴会は主な関係者をオンラインで招致し、乱高下の背景や規制のあり方を巡ってやり取りした。

公聴会の議題は「ゲームは止まったのか?空売り勢、SNS(交流サイト)、個人投資家の衝突で誰が勝ち、誰が負けるのか」。主な論点は①ヘッジファンドなどによる空売りやその情報開示②ロビンフッドによる一部銘柄の取引停止措置の背景や妥当性③SNS上での「買いあおり」などの不正行為の摘発――などだ。

公聴会の参加者は冒頭で自らの主張を述べた(一部声明文から)

取引停止措置、「申し訳なかった」

ロビンフッドCEOのテネフ氏

ブラッド・テネフ氏 ロビンフッド・マーケッツ最高経営責任者(CEO)

(ゲームストップ株など)特定の株の取引を一時的に制限したのは、規制当局が定める預託金の条件に従うためでしかない。前例のない取引量に対応するために必要な措置だった。多くの仲介会社が類似の理由で制限措置を講じている。顧客がロビンフッドを使って取引を再開できるよう、34億ドルの追加資本を調達する措置を講じた。ロビンフッドがヘッジファンド救済のために行動し、顧客の利益を損なうように動いたという主張は全く間違っている。何百万人もの小口投資家や、我々の顧客が最優先だ。(取引制限は)申し訳なかった。二度と同じことを起こさないよう全力で対応している。

ロビンフッドの取引制限、何の役割も果たしていない

シタデル創業者のグリフィン氏

ケン・グリフィン氏、シタデル創業者

ロビンフッドの取引制限の決定についてシタデルは何の役割も果たしていない。制限を知ったのは彼らが公表した後だ。1月最終週に取引が過熱していた際、シタデルは流動性を提供し続けた唯一のマーケットメーカーだった。寄せられた注文の規模の大きさは、あらゆる市場環境に対応できるシタデルの能力に対する個人投資家の信頼を反映している。

ヘッジファンド、救済されていない

メルビン・キャピタルCEOのプロトキン氏

ゲイブ・プロトキン氏、メルビン・キャピタルCEO

メルビンは取引制限の決定で何の役割も果たしていないし、制限も報道で知った。メルビンは一連の出来事で「救済」されたわけではない。1月、レディットのあるグループがメルビンの具体的な投資について、米証券取引委員会(SEC)の提出書類を参考にして書き込みを始めた。そこでは我々と反対の方向に取引をするよう勧めた。投稿の多くは私や他の人に向けた反ユダヤ主義的な中傷も含んでいた。一連の流れで残念なのは、狂乱に乗じた一部の投資家が今では大きな損失を出してしまったことだ。

個人の団結、社内規則の範囲内

レディットCEOのハフマン氏

スティーブ・ハフマン氏、レディットCEO

レディットの掲示板内のフォーラム「ウォールストリート・ベッツ」は多くの金融・投資関連コミュニティーの1つだ。誰かがもうければ祝福し、損をすればただ応援する。数週間前、我々はコミュニティーの力を目の当たりにした。個人投資家が通常なら手が出せない投資機会を得るため、さらにその後は既存の金融大手の批判から個人を守るために団結した。我々の義務は「ウォールストリート・ベッツ」を稼働させ続けることだ。24時間体制で働き、技術的な変更に対応し、情報量の増大に耐えられるようにした。当局の要請にはもちろん協力するが、コミュニティーの活動は我々の規則内に収まっていたと信じている。

SNSで買い宣伝、「ばかげている」

個人投資家のギル氏

キース・ギル氏(個人投資家)

私はヘッジファンド勤務ではないし顧客もいなければ、個人的な投資助言でお金をもらってもいない。ゲームストップ株への投資とSNSへの投稿は私個人のものだ。私は自分の利益のために株の売買に誘ったわけではない。株価を動かそうとするどんな集団にも属していない。私がゲームストップ株を買ったのは、同社株が市場から著しく過小評価されていたと確信していたからだ。私がSNSを使ってゲームストップ株を投資家に宣伝したという考えはばかげている。20年12月時点で私のユーチューブは529人、ツイッターには550人のフォロワーしかいなかった。

質疑応答ではロビンフッドによる取引制限や、マーケットメーカー(値付け業者)であるHFTに注文を回送する見返りとして受け取るリベート「ペイメント・フォー・オーダーフロー(PFOF)」、SNS投稿の監視体制などが焦点になった。主なやり取りは以下の通り。

Q 今日の出席者から取引制限に関して何らかの圧力はあったか。必要な資本の量を積まなかった過ちはなぜ起きたのか。

ロビンフッドのテネフ氏 全くなかった。取引制限はロビンフッドによって判断された、(清算機関向けの)預託金確保の問題だ。我々は資本の必要性について判断を誤ったとは思わない。これまで市場で見たことのない現象が起きた。基本的に予測しえない。この特殊な状況下で規制上必要な預託金のために資本を確保した。

Q 今後このような問題があった場合、どう対処するのか。資本を確保できず破綻に追い込まれた際のシナリオは。

テネフ氏 このほど調達した34億ドルは市場変動やその他の「ブラックスワン・イベント(めったに起こらない出来事)」に対処するためのクッションになる。我々が破綻すれば、今回取引を停止した13の個別株にとどまらず、市場全体へのアクセスを失うことになる。ロビンフッドの1300万人の顧客にとって大惨事となる。

Q ロビンフッド利用者で20歳の若者が大金を失った(後に自殺した)。どう受け止め、改善策はとったのか。

テネフ氏 アレックス・カーンズ氏の死はとても残念で、私や我々の会社全体はとても困惑した。オプション取引に関する説明を増やし、取引画面の仕様を変え、取引をする顧客の条件を厳しくした。常時相談できるカスタマーサポート体制も整えた。我々はただちに行動し、オプション取引の安全性を担保するための措置を講じた。

Q PFOFの仕組みの説明を。

テネフ氏 PFOFの導入で顧客の取引手数料をなくすことができた。シタデルが(当社の)顧客注文の多くを受ける理由は、シタデルの売買執行コストが低いからだ。最も低いコストを提供するマーケットメーカーに自動的に注文が回るようにシステムはできている。

シタデルのグリフィン氏 PFOFはシタデルのように最良の売買執行コストを(ロビンフッドなどの)ブローカーが享受することで、委託手数料を無料にした。証券取引の民主化を実現し、市場に革新をもたらした。SECの規制に従って実施している。売買執行コストは注文を入れるブローカーの条件などによって変わる。

Q PFOFはロビンフッドの収益の何割を占めるのか。

ロビンフッドのテネフ氏 正確な数字は分からないが、5割以上を占めている。

Q SNSの動きや取引プラットフォームに与える影響をどう監視しているのか。

テネフ氏 現時点ではSNSを監視していない。SNS運営企業が持っているような投稿と個人投資家を関連付けるデータは保有していない。

Q ゲームストップ株のような大規模な空売りは株価操作にあたるのではないか。空売り規制を強化する必要はあるか。

シタデルのグリフィン氏 ゲームトップ株の空売りは例外的に規模が大きかったが、空売りについての規制見直しの論議をすべきかどうかはわからない。「ネーキッド・ショートセリング」(取引の裏付けとなる株式を確保せずに空売りすること)は禁止されているが、ヘッジファンドは規制に従って空売りをしている。年金基金などは貸株をすることで利益を得ており、空売りが大規模に利用されることが、必ずしも規制が必要だということにはならない。

Q ゲームストップ株をいまでも買うか?

ギル氏 自分の投資スタイルは積極的だ。個人的には今のゲームストップの株価は魅力的だと思う。

Q この現象を主導した。いつゲームストップ株を買い、株価がどう推移すると思っていたのか。

ギル氏 19年6月にゲームストップ株に初めて資金を投じた。当時は5ドルくらいだった。いずれは20~25ドルに上るかもしれないと思っていた。(購入時に21年1月高値の483ドルまで上がる可能性は)低いと思っていた。

Q レディットの投稿の管理体制は。利用者が実在する人か、どう検証しているのか。

レディットのハフマン氏 我々は掲示板の信頼性を保つために多くの時間を割いている。レディットの掲示板に載るあらゆる内容はユーザーによって投稿され、ランク付けされる。そのシステムは信頼でき、操作できるものではない。今回の事例においても、操作が起きたという兆候は何もない。レディットを利用するために、完璧な本人情報の開示は求めていない。プライバシーは極めて重要だ。どの程度開示するかを選ぶことができる。自分についての情報を完全に開示する必要があるなら「ウォールストリート・ベッツ」は存在しなかっただろう。利用者は損益についての投稿を通じて自身の財務状況を開示している。

次回はSECら規制担当者を招致へ

下院金融サービス委員会のウォーターズ委員長=ロイター

公聴会は午後5時半ごろに終了した。明確な結論は出ず、金融サービス委員会のウォーターズ委員長は次回、SECや米金融取引業規制機構(FINRA)の担当者を招く方針を示した。

公聴会出席者の略歴は以下の通り。

ブラッド・テネフ氏 ロビンフッド・マーケッツ最高経営責任者(CEO)(スマホ証券)
2013年にスタンフォード大時代の友人とロビンフッドを創業。大学時代の専攻は数学で大学院中退後はヘッジファンドや、超高速取引業者(HFT)用のソフトウエア開発会社を経営していたこともある。11年の「ウォール街を占拠せよ」運動をきっかけに方針を転換。「金融を民主化する」との目標を掲げる。19年に手数料無料化をいち早く導入し、若年層を中心に個人投資家の口座や売買が急増した。

ケン・グリフィン氏 シタデル創業者(HFTやヘッジファンド運営)
HFTやヘッジファンドの創業者。HFTのシタデル・セキュリティーズはIT(情報技術)やアルゴリズム投資で先行し、業界でも屈指の高収益企業とされる。直近の開示資料によれば、ロビンフッドが個人の注文を回送し、リベートを受ける最大のHFTでもある。グリフィン氏は富豪として知られ、共和党への大口献金者に名を連ねる。

キース・ギル氏(ゲームストップ株急騰の仕掛け人とされる個人)
リーマン・ショックさなかの09年に大学卒業。複数の職を転々とする間、独学で投資を始めた。公聴会の声明文によると、19年に「割安」と判断したゲームストップのコールオプションを購入し、以降、買い増した。ゲーム好きで同社の店舗でソフトなどを購入していたという。レディットやユーチューブなどでゲームストップ株の買いを呼びかけ、急騰の仕掛け人のひとりとされた。

ゲイブ・プロトキン氏 メルビン・キャピタルCEO(ヘッジファンド)
ヘッジファンドの元SACキャピタル・アドバイザーズ出身。独立後のメルビン立ち上げ時には、SAC創業者(現ポイント72)のスティーブ・コーエン氏も出資した。社名の「メルビン」は尊敬する祖父の名前。消費やテック企業を中心に運用し、「割高」と判断すれば空売りをする。ゲームストップ株を空売りしていたが、個人投資家の「共闘」買いで株価が急騰するなか、損失が膨らんだ。21年1月の運用成績はマイナス53%になり、シタデルやコーエン氏のファンドから支援を受けた。

スティーブ・ハフマン氏 レディットCEO(オンライン掲示板運営)
オンライン上のコミュニティーとして05年に立ち上げた。掲示板のテーマは社会や政治、スポーツ、株式投資など幅広い分野に及ぶ。なかでも、「共闘」買いを巡るやり取りが活発にされた「ウォールストリート・ベッツ」は個人投資家の登録が急増した。20年10~12月期の広告収入は前年同期比90%増加したという。2月8日には事業拡張へ2億5000万ドル(約260億円)の資金を調達したと発表。企業価値評価は60億ドルに達するとされる。

この他、有識者としてケイトー研究所のジェニファー・シュルプ氏も参加した。

(ニューヨーク=大島有美子、伴百江、吉田圭織)

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