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Facebook、仮想空間で会議 「メタバース」で先行へ

フェイスブックの「Horizon Workrooms」では実際のパソコンの画像を共有しながら仮想空間で会議を開ける

米フェイスブックが19日、会議やセミナーをCG(コンピューターグラフィックス)で作成した仮想空間で開くことができるサービスを始めた。IT(情報技術)企業などの間で「メタバース」と呼ぶ仮想空間への関心が高まるなか、フェイスブックは強みを持つゴーグル型VR(仮想現実)機器を活用した本格的なサービスを拡充して他社に先行したい考えだ。

「当初からVRはゲームなどのエンターテインメント以外の分野でも役に立つと確信しており、新サービスはこのことを示す好例となる」。フェイスブックのAR(拡張現実)/VR担当副社長のアンドリュー・ボスワース氏は日本経済新聞などの取材で強調した。

米国や日本など約20の国・地域で始めた新サービス「Horizon Workrooms(ホライゾン・ワークルーム)」は同社のVR端末「オキュラス・クエスト2」を通じて使う。利用者が自分に似せたアバター(CGで作成する分身)をつくり、会議を開いたり、参加したりできるようにする。

異なる場所にいる参加者がひとつの会議室に集まったような感覚を再現するほか、仮想空間に設けたホワイトボードに文字や図形を描いて共有する機能を提供する。利用者の実際のパソコンと仮想空間のパソコンを連動させ、文字を入力したり、画像データを会議の参加者と共有したりする機能も設けた。

フェイスブックの「Horizon Workrooms」では コントローラーをペンとして使い、文字や図形を描いて共有することができる。

新型コロナウイルスの感染拡大を機にビデオ会議システムの利用が急拡大したが、「一体感が乏しい」といった指摘もある。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は米メディアの取材で、「オフィス再開後も一部の社員が外部から会議に参加するといったことが想定されるが、VRの活用により一緒にいる感覚が得られるようになる」と指摘した。

フェイスブックは2014年に円換算で約2000億円を投じ、VR機器の開発を手がける米オキュラスVRを買収した。同社を母体としてVR機器の小型軽量化や低価格化を進めてきた。また、ゲームを中心とするコンテンツを開発し、外部企業がコンテンツを制作するための環境も整えた。ARを活用した眼鏡型端末の開発も進めている。

こうした製品やサービスを基盤として、メタバースの構築を主軸とする企業への転換を図りたい考えだ。ザッカーバーグCEOは7月、「数年内に当社はSNS(交流サイト)の企業からメタバースの企業へ変わる」と宣言した。

ボスワース氏は取材で、メタバースについて「VR機器だけでなく、AR機器やパソコンなどからもアクセスが可能で、複数のハードやソフトを横断した形で利用できる」と説明した。ホライゾン・ワークルームもVR端末に加え、ビデオ会議システムなどからも参加できるようにしている。

メタバースは1990年代に生まれた概念で、20年ほど前に「セカンドライフ」が流行した。現在は米エピックゲームズの「フォートナイト」や任天堂の「あつまれ どうぶつの森」などの人気が高いが、多くはパソコンやスマートフォンの画面を通じた利用だ。VRやAR技術と組み合わせる動きはフェイスブックや米マイクロソフトなどにとどまっている。

フェイスブックはSNSでは米アップルなどが提供するスマホの基盤に依存してきた。アップルがプライバシー保護規制の強化を進めると主力の広告事業の収益が低下するなど、他社の影響を受けやすい。そのため「次のコンピューター基盤の構築」(ザッカーバーグCEO)を目標として掲げ、本格的なメタバース関連に数十億ドル規模の開発費を投じる。

VR機器のシェアで首位になるなど一定の成果を収めている一方、課題もある。ひとつは収益モデルの確立だ。ザッカーバーグCEOはメタバースでもSNSと同様に広告が収益になる可能性を示唆しているが、個人の趣味や嗜好の分析に依存した広告への逆風は強い。6月にはVRを活用した広告の試験に同意していたゲーム開発企業が中止を表明した。

プライバシー保護や安全・安心の確保、同じような情報に触れ続けることにより思考が偏る「フィルターバブル」の防止なども必要だ。スマホ向けゲーム「ポケモンGO」を手がける米ナイアンティックのジョン・ハンケCEOは今月上旬、メタバースを「ディストピア(反理想郷)の悪夢」と批判した。倫理的な問題の解決も課題となる。

(シリコンバレー=奥平和行)

▼メタバース 人々が自由に活動・交流できる仮想空間を意味し、アバターを通じて商取引などができる。データの通信速度や処理速度の向上などを背景に一般の利用者が増えており、既にオンラインゲーム「フォートナイト」では観客のアバターを集めたオンライン上のライブが開催された。
現在はゲームにおける仮想空間が一般的だが、将来的には学習用途やオンライン会議などへの活用が期待されている。没入感を高めるため、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術の利用も見込まれる。

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