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ウォルマート対Amazon 現金給付で緩む財布争奪戦

(更新)
ウォルマートは通販の需要増に伴い、米国内でピックアップサービスを担う店舗を3750店に拡大した

【ニューヨーク=白岩ひおな】米小売りの2強、ウォルマートとアマゾン・ドット・コムの決算が出そろった。アマゾンは会員サービスを武器に電子機器などの販売を伸ばし、新たな収益源として中小企業の通販サイト構築支援にも手を広げる。売上高でアマゾンの猛追を受けるウォルマートは実店舗の強みを生かして生鮮宅配を広げ、すみ分けを図る。

ウォルマートが18日に発表した21年1月期通期決算は売上高が前年比6.8%増の5552億ドル(約58兆6600億円)で、通期の売上高として過去最高を記録した。一方、アマゾンの20年12月期の売上高は3860億ドルで、前年から38%増と大幅に伸長した。オンラインストアと実店舗を通じた直接販売による小売売上高と、出店企業の販売サービスを合わせた売上高は2940億ドルに上る。小売売上高の規模ではウォルマートの優位は揺らいでいないが、2年前まで倍近い開きがあった両社の差は縮まった。

コロナの現金給付で個人消費堅調

2社ともオンライン消費の好調ぶりが目立った。ウォルマートのネット通販の売上高は直近四半期に前年同期比69%増えた。アマゾンは主力のネット通販の売上高が46%増の664億ドルだった。

米国の個人消費は好調だ。商務省が17日発表した1月の米小売売上高(季節調整済み)は前月比5.3%増と急回復した。政府が1月に国民1人あたり600ドルを給付したことで、消費者の財布のひもが緩んだとみられる。バイデン政権は1人あたり1400ドルの追加給付を計画している。さらなる浮揚を見込む個人消費をめぐり争奪戦が激しくなる。

両社の強みは、製品部門別の米消費額に占めるシェアに如実に表れる。企業の収益分析などを手がける米PYMNTS.comの21年1月の調査は、製品の分野ごとに両社の全体に占めるシェアを推計している。食品・飲料部門ではウォルマートが18%とアマゾンの1.8%に10倍の差をつけた。一方、電子機器・電化製品部門の総消費額に占める割合はアマゾンが24%とウォルマート(5%)の4倍超で、ネット通販に限ればアマゾンが5割近くを占める。

ウォルマート、投資一気に4割増

ウォルマートは強みの生鮮品宅配を軸に収益拡大を狙う。18日の決算発表で同社が示した今期の投資額は約140億ドル。21年1月期の実に4割増の水準で、配送網の効率化や自動化、会員サービスの拡充に対する意気込みがにじむ。今春にはアーカンソー州で、あらゆるものがネットにつながる「IoT」を使った宅配ボックスの実験を開始。利用者が留守でも生鮮品などの食料宅配を可能にする。

21年1月期には米国内の4700店のうち、通販で頼んだ商品を店頭で受け取るピックアップサービスの拠点を3750店、同日配送の対応拠点を3000店に広げた。20年9月に開始した継続課金型の即日宅配サービス「ウォルマート+(プラス)」ではアマゾンの有料会員サービス「プライム」や生鮮品宅配の「フレッシュ」に対抗し、消費者の囲い込みを急ぐ。20年12月からは通販サイト「ウォルマート・ドットコム」で無料配送の利用条件を撤廃。サイトの購入商品の返品を無料で集荷するサービスも始めた。

アマゾンなど米巨大IT企業の牙城であるネット広告の切り崩しにも動く。ビッグデータを活用し、店内での買い物時の情報検索から宅配、ピックアップの利用までを一本化した「ストアアプリ」や通販サイト上で連動したネット広告を展開する。米国内の店舗に設置する17万台超のスクリーンも広告スペースとして提供し、今後5年で広告事業規模を現在の10倍に拡大する計画だ。

アマゾン、M&Aで収益源開拓

アマゾン・ドット・コムは中小企業の通販サイト構築支援にも手を広げ、オンライン消費を後押しする=ロイター

一方、アマゾンはネット通販のノウハウを生かし、中小企業の通販サイト構築を新たな収益源に育てる。1月にECサイト構築支援を手がけるオーストラリアのSelz(セルズ)を買収した。中小企業によるオンラインサイト作成や決済機能を追加するためのプラットフォームを提供する。競合するカナダのショッピファイやECプラットフォームを手がける米ビッグコマースなどに対抗し、企業の顧客層を開拓する。

通販注文の急増を背景に、先端技術の活用による配送網への負荷軽減も急ぐ。22年にはテネシー州アルコアにロボット技術を使った配送センターを新設する。63万4812平方フィート(5万9000平方メートル)の敷地で800人を雇用し、電子機器や書籍などを中心に商品の集荷、梱包、出荷までを手がける。同州やジョージア州では小型の自動配達ロボット「Scout」による住宅地での配送実験なども実施している。

21年には新型コロナワクチンの接種が広がり、経済活動が正常化に向かうとみられる。コロナ下の「特需」を享受してきたオンライン消費も伸びが鈍化するなか、リアルとネットの垣根を越えた競争が激しくなりそうだ。

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