Apple、「iMessage」にハッカー対策 端末乗っ取り防止

【シリコンバレー=白石武志】米アップルは18日、「iPhone」などで提供しているメッセージ交換サービス「iMessage(アイメッセージ)」に、ハッキングを防ぐ新たな機能を加えたと明らかにした。これまで積極的に開示してこなかった取り組みだが、同サービスの安全性について批判を続ける米フェイスブックに反論する狙いとみられる。
アップルの担当者によると、「ブラストドア(防爆扉)」と呼ぶ新機能はiMessageを使って送られてきたテキストなどを基本ソフト(OS)からいったん隔離して解析し、安全性を確認した上でアプリ上に表示する。ハッカーがメッセージを装って送ってくるマルウエア(悪意のあるソフト)が実行されて端末が乗っ取られたり、情報が盗み出されたりするのを防ぐのが目的だ。
iMessageがテキストの受信によってハッキングされてしまう危険性については、米グーグルのセキュリティー研究チームが2019年に指摘していた。アップルは20年秋に始めた最新OSの配布にあわせて数カ月前からブラストドアの機能を加えていたが、これまで新機能の導入を積極的には公表していなかった。
アップルが一転して取り組みを開示した背景には、プライバシー保護やセキュリティー問題をめぐって対立を深めるフェイスブックの存在がありそうだ。同社のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は1月27日の決算発表で「iMessageのバックアップ保存は初期設定では(メッセージを送ってから受信されるまでの)エンド・ツー・エンドの暗号化に対応していない」などと主張し、アップルを批判していた。
アップルの担当者は「iMessageが強力なエンド・ツー・エンドの暗号化を使っていることに疑いの余地はない」としている。外部の専門家に指摘されていたiMessageの脆弱性についても対策済みであるとアピールすることで、安全性に対する消費者の懸念を払拭する狙いとみられる。
アップルは20年末、各アプリがどのような個人情報を収集・共有しているかを消費者に一覧で見やすく表示する「プライバシーラベル」と呼ぶ取り組みを始めた。フェイスブックの対話アプリが多くの個人情報を収集している実態が明らかになり、プライバシー意識の高い一部の消費者は競合の対話アプリに流れている。
プライバシーを「基本的人権」と位置づけるアップルは近く、iPhoneなどの自社製品上でターゲティング広告を制限する取り組みを始める計画も示している。一連の取り組みを不服とするフェイスブックはアップルを提訴する準備を進めているとも報じられている。