習氏、ロシア制裁に反対 米中首脳協議
中国声明、軍事支援触れず

【ワシントン=坂口幸裕、北京=羽田野主】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は18日、ロシアによるウクライナ侵攻などをめぐりテレビ会議形式で協議した。習氏は「全方位、無差別の制裁で被害を受けるのは一般庶民だ」と述べ、対ロ制裁に反対した。
協議は約1時間50分におよんだ。米中首脳の協議は2021年11月以来で、ロシアによる侵攻後では初めて。
中国国営新華社によると、習氏は「各当事者はロシアとウクライナによる対話を支持するべきだ」と指摘。米国と北大西洋条約機構(NATO)にロシアとの直接協議を促したうえで「ロシア・ウクライナ双方の安全保障上の懸念を解消すべきだ」と述べた。ロシアが批判するNATOの東方拡大などが念頭にあるとみられる。
習氏は台湾問題を巡る懸念も伝えた。「台湾問題がうまく処理されなければ、(米中)両国関係に破壊的な影響を及ぼす恐れがある」と異例の強い言葉で警告した。米国による台湾への武器売却や台湾有事に介入する姿勢を示唆していることなどを批判したとみられる。「米国は中国の戦略的意図を誤読し、誤審した」とも語った。
ロイター通信は台湾の国防部(国防省)筋の話として、中国の国産空母「山東」が18日に台湾海峡の金門島付近を航行したと報じた。空母の甲板には軍用機を搭載していなかったというが、米中首脳協議の直前に中国が米国や台湾に揺さぶりをかけた可能性がある。
一方、バイデン氏は中国がロシアを軍事支援すれば制裁も辞さないと習氏に警告する構えだ。中国側の声明では習氏が軍事支援を巡ってどう発言したかに言及はない。
ブリンケン米国務長官は17日の記者会見で「ウクライナでロシアが使う軍事兵器の直接支援を中国が検討していると懸念している」と強調した。バイデン氏が習氏との協議で「中国は取った行動の責任を負うと明確にする」と明言した。「米国は中国に代償を科すことをためらわない」と続けた。
バイデン政権はロシアの特定の企業・銀行と貿易や金融の取引を禁じた。違反すれば外国企業や外国人も罰する「二次的制裁」が科され、制裁対象の企業・銀行と取引すれば中国にも制裁がおよぶ可能性がある。
半導体などハイテク製品の対ロ輸出も規制し、中国の半導体メーカーでも米国の製造装置でつくった製品を輸出すれば罰則を科すことができる。
ロシアは当初狙った短期決戦に失敗し、首都キエフなどへの侵攻が停滞しているとの見方が広がる。ロシアが中国からの軍事支援を受ければ戦局が変わる可能性があり、バイデン氏はロシア支援に回らないよう自ら習氏を説得したとみられる。
中国はこれまでロシアへの軍事支援の可能性を一貫して否定している。外務省の趙立堅副報道局長は18日の記者会見で、ブリンケン氏を念頭に「米国の一部の人は絶え間なく虚偽情報を流し、中国を中傷している」と批判した。
もっとも、中国は対ロシア制裁には一貫して反対し、ロシアとの通常の貿易や経済活動は継続する方針を示す。戦況が緊迫すれば食糧や通信機器などでも軍事用ととられかねないだけに米中間の火種が消えることはなさそうだ。