ウクライナ侵攻が新段階 ロシア、戦果求め大規模攻撃
ロシア国防省は19日、ロシアのミサイル・砲兵部隊が一晩でウクライナの1260カ所の標的を攻撃したと発表した。前日の標的数の4倍に増えた。ウクライナ侵攻は当初目標の首都キーウ(キエフ)から、東部支配に向けた新たな局面に入るが、ロシア軍の装備損失はウクライナの3.5倍に上るなど誤算は大きい。
ウクライナのゼレンスキー大統領は18日、東部ドンバス地方にロシア軍が大規模な攻撃を始めたと表明した。タス通信によると、ロシアのラブロフ外相は19日「(東部で)作戦の新段階が始まりつつある」と述べた。
ロシアは第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝った5月9日を対独戦勝記念日として重視する。池田嘉郎・東京大大学院准教授(近現代ロシア史)は「(プーチン大統領は)今回の侵攻を第2次世界大戦と意図的に重ねる部分が多い」と指摘。戦勝記念日までに一定の戦果を求められるロシア軍は、東部で反転攻勢をかける。

侵攻前、東部2州の約3割を親ロシア派武装勢力が実効支配していたが、今後はルガンスク州の一部とドネツク州西側の攻防が激しくなる。ルガンスク州知事は19日、ロシア軍がクレミンナ市を制圧したと発表した。
米国防総省高官は18日、ロシア軍がウクライナの東部や南部に76個の大隊戦術グループを配置したと明らかにした。14日時点では推計65個で、計9千~1万1千人程度を増員したことになる。
ロシア軍は北、東、南からドネツク州に迫る構えだ。国防総省高官によると、キーウから撤退した部隊がロシア西部のベルゴロドやヴァルイキで弾薬や食料などを補給、イジュームに向かった。ロシア軍はドネツク州の主要都市クラマトルスクやスラビャンスクの制圧を目指す。

当初ロシアは電撃的な首都制圧を目指したが、軍の損耗は大きかった。軍事情報サイト「Oryx」によると、ロシア軍は18日時点で戦車・装甲車1500台超や、火砲、対空ミサイルなど3000近い装備を失った。ウクライナ軍との損失の差は開き続け、3.5倍を超えた。補給面の課題や部隊の士気低下が苦戦の一因とみられる。
当面の焦点は南東部の要衝マリウポリの制圧だ。ロシア通信によると親ロ派勢力は19日、製鉄所に立てこもるウクライナ部隊に砲撃を始めた。ロシア国防省は改めて投降を呼びかけた。市当局によると、製鉄所地下には民間人1千人以上が避難している。
米政権は18日、8億ドル(約1000億円)規模の武器供与の第1弾がウクライナに到着したと表明した。ドンバスの戦いに備え、18基の155ミリりゅう弾砲など長距離火砲をてこ入れする。
自爆攻撃機能を持つ無人機「スイッチブレード」や対砲兵レーダーなども提供する。米軍はウクライナ軍に兵器の使い方などの訓練を数日以内に始めるという。
バイデン米大統領は19日午前(日本時間同日深夜)、日英など同盟・友好国とオンライン会合を開き、ウクライナ支援やロシアへの圧力強化などを協議した。(伊地知将史、ワシントン=中村亮)
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