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干ばつ、世界で相次ぐ 農業への打撃が食糧供給リスクに

干ばつで水位が大きく下がった貯水池(6月、カリフォルニア州)=ロイター

【サンパウロ=外山尚之】世界各地で異常気象が頻発している。米国では大型ハリケーンが南部を襲い、ロッキー山脈の西側では干ばつが続く。渇水が深刻なブラジルでは穀物の収穫量予測を下方修正するなど農業への影響も出ている。豪雨被害に伴う欧州での収穫減やアフリカの水不足による不作も伝えられる。気候変動がもたらす自然災害が、世界の食糧供給のリスク要因となる。

米内務省開拓局は8月16日、主要河川の一つであるコロラド川の水不足を宣言し、流域のダムで2022年1月から取水制限を始めると発表した。冬場の降雪量が減少しており、水系全体の総貯水率は1年前の49%から40%に低下。フーバーダムの貯水率は1936年の完成以来、最も低い水準だという。

ロッキー山脈を水源としメキシコまで約2300キロメートル続くコロラド川は米西部の農業に大きな役割を果たす。自然保護団体米ネイチャー・コンサーバンシーによると、10%の水を利用できなくなれば、様々な産業への波及効果もあり、流域の経済損失額は1430億ドル(約15兆7000億円)に達するという。水の割当量が削減される下流の南西部アリゾナ州では、トウモロコシ農家などへの打撃が懸念されている。隣国のカナダでも干ばつが農畜産業に影響を及ぼしている。

米国と並ぶ穀物の供給地である南米でも水不足は深刻だ。ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)は9日、20~21年度の穀物生産量の見通しを2億5230万トンと、前年度比1.8%減に引き下げた。中でもトウモロコシは同16.4%減と、同国中部での歴史的な渇水の影響が甚大だ。

降雨量の減少は物流の停滞も招く。隣国アルゼンチンでは北東部の農業地帯と中部の輸出港をつなぐ水路であるパラナ川の水位が低下。収穫した大豆やトウモロコシを輸出できず、代替輸送などで年間4億ドルを超える損失を見込む。

アフリカでは水不足が各地で食糧危機を起こしている。アンゴラでは40年ぶりの干ばつで農作物が育たず、国連世界食糧計画(WFP)は同国の全人口の約2割にあたる600万人が食料不足に陥っていると伝える。南アフリカやジンバブエ、マダガスカルなどでも干ばつが社会問題となっている。

フーバーダムの貯水率は危険水位まで低下した(6月、ネバダ州)=ロイター

米農務省(USDA)は8月12日、21~22年度の世界の穀物生産が7月の予想から約1%減となる27億6876万トンになりそうだと発表した。農業技術の進歩や耕作面積の拡大で増加傾向は続くものの、気候変動によるリスクは高まっている。保険料のコスト増加も農作物の価格上昇要因で、世界的なインフレ要因にもなりかねない。

異常気象に伴うリスクは干ばつだけではない。ドイツでは7月に発生した大洪水で、小麦の収穫量が減少する見通しだ。日本や中国でも豪雨による土砂災害や洪水で農産品が被害を受け、生鮮野菜の価格は上昇している。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した気候変動に関する報告書では、産業革命前と比べた世界の気温上昇が21~40年で1.5度に達するといい、温暖化がもたらす異常気象や自然災害の発生頻度は高まりそうだ。世界銀行も13日、早急に気候変動対策が取られない場合、海面上昇や高潮で穀物の生産や養殖、漁業が困難になり、住民が避難を余儀なくされる「ホットスポット」が30年までに世界中で出現し、環境変化に伴う国内避難民は50年までに世界で2億1600万人に達するとの報告書を発表した。

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