米当局、JPモルガンに罰金220億円 私用端末で業務連絡

【ニューヨーク=宮本岳則】米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)は17日、JPモルガン・チェースが従業員同士のやりとりを記録・保存していなかったとして制裁金を科すと発表した。支払総額は2億ドル(約220億円)となる。同社の幹部を含む100人以上の従業員が、個人の携帯端末などで業務内容を含む数万通のメッセージをやりとりしていた。
米国では1930年代以降、不正行為の抑止を狙って従業員のやりとりを保存することが義務付けられている。JPモルガンは管理体制の不備を認め、SECに対して1億2500万ドル、CFTCに7500万ドルを支払う。米国では企業側が不正の存在を公に認めないまま、罰金の支払いで当局と和解するケースが多い。SECは今回、JPモルガンが従業員の監督を怠っていた点について、同社に認めさせた。
SECの公表資料によるとJPモルガンの証券子会社では、少なくとも2018年1月から20年11月まで不正行為があった。従業員が個人端末のテキストメッセージ、SNS(交流サイト)アプリ「ワッツアップ」、個人の電子メールアドレスを使って、業務上の連絡をしていた。従業員を監督する立場のコンプライアンス(法令順守)担当者も私用端末でやりとしていたという。
SECのゲンスラー委員長は「テクノロジーの変化にともなって、登録業者がコミュニケーションを適切に記録し、公式ルート以外で(業務連絡が)行われないようにすることがさらに重要になる」と指摘した。SECは連絡記録を基に、不正行為を発見し、摘発につなげるからだ。ゲンスラー氏は「引き続き責任を追及する」と述べ、他の金融機関にも調査を広げる可能性を示唆した。
JPモルガンは今回の措置に先立ち、再発防止に動いている。今年に入って従業員の携帯端末に「ムビアス」と呼ばれるメッセージ・通話アプリを導入し、すべてのやりとりを記録するようにした。JPモルガンの広報担当者はSECとCFTCの発表についてコメントを拒否した。