/

FRB議長「経済再開、インフレ圧力は一時的」 会見要旨

(更新)
オンラインで会見するFRBのパウエル議長(17日)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は17日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を開き「経済再開で消費が持ち直すにつれ、物価に上昇圧力がかかりうる」と述べた。ただその上昇は一時的であるとの見方を強調した。主な発言と質疑応答は以下の通り。

(新型コロナウイルスの)パンデミック(世界的大流行)が我々の海岸に押し寄せてから丸1年がたった。医療従事者の素早い対応と、日常に不可欠な業種で働く人々に感謝する。米国経済は危機にひんし、議会は戦後の不況において最大かつ最速の対応で家計や企業、自治体を財政的に支援した。FRBは経済への打撃を最小限に抑え、回復を可能な限り力強いものにするため、あらゆる手段を迅速に講じた。

経済が落ち込んだことは確かで広範囲だったが、議会や州政府の力強い行動により最悪の結果は避けられたと言えよう。より多くの人の雇用が維持され、事業を継続でき、より多くの収入が守られた。こうした進展は喜ばしいが、満足すべきではない。

きょう、我々は政策金利をゼロ近傍に据え置き、一定量の国債購入を維持すると決めた。こうした施策は、金利とバランスシートに関する我々の力強いガイダンス(指針)と合わせて、金融政策が経済回復をなし遂げるまで経済を強く支えることを保証するだろう。1月以降に(コロナの)新規感染者数や入院患者数、死者数が減り、ワクチン接種が進んでいることは、今年後半にも通常の状況に戻る希望となる。

経済の回復は一様ではなく、完全回復からはほど遠い。先行きの不確実性も残っている。20年末に回復ペースが鈍っていた経済活動や雇用の指標は直近で上向いた。ただ感染再拡大とソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)の影響を受ける業種は弱いままだ。家計によるモノの消費は今年に入って増えたが、サービス消費は低迷している。特に旅行やホテル業界など人が近くに集まることを必要とする業種が厳しい。

住宅市場は経済が減速する前以上に回復した。企業による設備投資や製造業生産も、前例のない財政・金融政策に支えられて持ち直してきた。回復はFOMC参加者の予想以上に進み、21年の経済成長率の予測を引き上げた。強気となった見通しの理由としてワクチンの接種の進捗が挙げられる。

経済全体の回復を受け、雇用情勢も直近で上向いてきた。娯楽やホテルなどの分野では20年12月から今年1月にかけて失われた雇用の3分の2を取り戻した。ただパンデミック前の水準と比べれば300万人下回る。2月の失業率も6.2%と高水準にとどまっており、労働参加率も低いままだ。

FOMC参加者は、失業率が今後下がり続けると予測する。ただサービス分野で働く低賃金の労働者やアフリカ系米国人、ヒスパニック系の人が大きく雇用喪失の打撃を受けている。

物価上昇率は長期的な目標である2%を下回っている。12カ月平均では、極めて物価上昇率が低かった20年3~4月の影響が取り除かれるため、今後数カ月で上向くだろう。経済再開に伴って消費が急速に持ち直すにつれ、物価に上昇圧力がかかりうる。供給制約があり、短期的な生産対応が制限されている場合もそうだ。だがこうした1回限りの物価上昇はインフレに一時的な効果しか及ぼさない。

FRBの危機対応は、米国人のために最大雇用と物価安定を達成するという我々の義務に導かれ、金融システムの安定化という責務に沿ったものだ。最大雇用は基礎的かつ包括的な目標だ。数年先に最大雇用を達成するには、長期的な期待物価上昇率が2%に固定されるかが重要だ。

声明で繰り返したように、物価上昇率が2%をずっと下回るようなら、我々はしばらくの間、2%を適度に超えるように目標を定めるだろう。雇用と物価目標が達成されるまで、我々は緩和姿勢を維持する。今年には物価上昇率が一時的に2%を超えそうだが、それは我々の基準を満たさないと注記しておく。

我々は米国債の購入を少なくとも月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドルのペースで買い入れる施策を続ける。我々の目標への道のりは長く、十分な進展が見られるには時間がかかるだろう。我々はあらゆる手段を使って経済を支え、この困難な時期からの回復ができる限り力強いものになるのを支える。

―――いつ量的緩和の縮小について検討するのか。中期的な政策見通し(SEP)では23年までに失業率が大きく下がり、物価上昇率も2%を上回るとしている。

「まだ縮小について話す時期ではない。景気が大きく改善するまでは現状のペースで量的緩和を続ける。改善とは実質的な改善であって、見通しではない。それは労働市場が完全雇用に大きく近づき、物価上昇率が2%目標に向けて進展した時点だ。縮小を決める際にはデータをもとに前もって縮小の可能性を公に示唆するつもりだ」

「労働市場の状況は失業率だけでなく、広範に分析する。物価上昇率は一定期間2%を上回る必要がある。そこに我々の期待値を入れてガイダンスを決める。今後2~3年間の景気の状況は極めて不透明で、利上げのタイミングに必要以上に焦点をあてることはしない」

―――FOMCの複数の参加者が22年中の利上げの可能性を示唆している。

「様々な意見の参加者がおり、活発な議論を交わしたが、今回の会合では大半のメンバーが予測期間において利上げを見込まなかった。20年12月以降に大きく経済は回復しており、利上げの時期についての見通しを出す参加者がいてもおかしくない」

「利上げについては非常に明確な基準を設定している。完全雇用と評価する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して2%を緩やかに上回る状態が続くことが条件だ。参加者はこれに全員賛同している。足元が不確実な状況のため、参加者の予測も通常より不確実性が高いといえる。政策見通しは個人の予測をまとめたもので、FOMCの予測ではない。いつ行動するかを約束し、予測する意図はない」

―――長期金利の上昇は景気にマイナスか。他国は上昇を抑える措置をとっているが、パウエル議長の見解は。

「現在の金融政策は緩和的だが、金融市場で金利がしつこく上昇することで市場の秩序を乱すことになれば、我々の目標達成には弊害となる。政策金利の誘導水準と資産買い取りの水準は緩和的な状態を維持しており、景気を支えている」

――失業率と物価上昇の関係をどうみているか。インフレはどこまでが許容範囲か。

「かつて強い関連があった時期があったが、今はそうではない。失業率が低く賃金上昇が起きたとき、企業は価格を上げるより、上昇分を利幅内で吸収する。従って、我々はインフレを過度に心配せず雇用改善を追求することができる」

「2%をやや上回る状態と述べ、あえて明確な数字を表明するのを避けた。実質的に2%を超えた際には具体的な水準を言えるだろう。今回の枠組みは予測をもとに前もって動くことはせず、実際のデータが出るまで待つということだ。それによって我々への信頼を向上させたい」

――家計は多額の余剰貯蓄を抱えている。蓄積した需要が解放されると、インフレにどのような影響があるか。

「旅行やホテルなどの経済が完全に動き出せば、人々が支出し、比較的緩やかなインフレが起きる。だが恒久的なものではない。米国の供給者は非常にダイナミックで、人々は事業を興し、飲食店は再開し、航空会社はまた飛行機を飛ばし始める。高騰は1回限りで、期待物価上昇率が2%付近で安定している限り、その後変化は起きないだろう。仮に大きく2%を超えるようなら、金融政策で対応する。我々は、期待物価上昇率が2%から大きく上下に動かず安定するように努める」

――欧州で感染再拡大により経済活動の制限を再び強化しているが、その影響は。

「米国は世界的に経済回復でリードしている。米国で強まる需要は、やがて世界経済も支えるだろう。米国では強力な財政支援がなされており、ワクチン接種が迅速に進み、感染者数も減っているので懸念していない。経済指標は早い段階でさらなる回復を示し、回復を維持するだろう」

――金融安定性へのリスクとして懸念されるものはあるか。

「一部の資産価値は歴史的に高まっている。家計への打撃は支援によって想定より抑えられた。多くの企業で収入が減ったが、融資を受けるなどしてバランスシートに現金がある。従って家計と企業に特に懸念はない。ただ一部の短期金融市場とノンバンクでは大きなストレスに対して十分な安定性を維持できなかったため、規制監督者として他の当局と連携しつつ、高い優先度で見直しを検討する必要がある」

――今回の財政政策が長期的な視点で経済に与える影響をどうみるか。

「懸念されていた(最悪の)事態の回避に大きく役立った。大規模な経済対策は、完全雇用の回復を加速させ、人々の生活に大きな違いをもたらす。前例がないため予測が非常に難しいが、効果は数年先までみられるだろう。効果を維持するため、我々にできる支援も続けていく」

「生産能力の向上には、人材や設備、ソフトウエアなどへの投資が欠かせない。より生産性の高い経済や生活水準の向上には、多くの投資が要る。議会は失われた収入を補填し、経済正常化に向けて人々を支援しているが、長期的には投資に焦点をあてる必要も出てくるだろう」

――労働市場における人種格差をどうみているか。

「注視している。アフリカ系米国人のほかヒスパニック系の失業率も上昇しており、労働市場の停滞を意味する。20年2月までは人種格差は縮まっていたので残念だ。不況下でこうした層の失業率は、白人に比べて2倍の速さで上昇する。特に今回は(人種的)マイノリティーや低賃金労働者を雇用するサービス業などに直接打撃を与えた。多くの人は金融資産も持っていない。一部で経済回復が最も遅れている理由だ」

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン