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米、中南米外交でジレンマ 制裁緩和も人権懸念消えず

【メキシコシティ=清水孝輔】バイデン米政権が中南米外交でジレンマに直面している。カリブ海の社会主義国キューバや南米ベネズエラに対して制裁の一部緩和を打ち出し、中南米での影響力の拡大を模索する。一方で両国には国民に対する強権姿勢など人権問題が残っており、全面的な制裁の撤廃には踏み込めずにいる。

米政府は米国籍や永住権を取得したキューバ人が母国から家族を呼び寄せられる制度を再開する。在キューバ米大使館はすでにキューバ人へのビザ発給の手続きを一部再開している。教育や研究目的の集団渡航も認めて人的交流を促す方針だ。四半期に1人1000ドル(約13万円)までというキューバへの送金の規制も撤回する。

キューバでは新型コロナウイルスの感染拡大で主力の観光業が落ち込み、経済が打撃を受けている。国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)によると、キューバは2020年の実質経済成長率が前年比で10.89%のマイナスだった。米政府による制裁緩和は、キューバの国民生活の改善につながる可能性がある。

米政府はバイデン氏が副大統領を務めていた15年にキューバと国交を回復した。トランプ前大統領は制裁を強化し、再びキューバとの対立が鮮明になった。バイデン政権に対しては21年の発足当時からキューバとの関係改善に対する期待があった。制裁緩和によってキューバ外交を前進させたい考えだ。

米政府はベネズエラに対しても制裁を一部緩和する可能性を示している。米政府高官は17日、米石油大手シェブロンがベネズエラの国営石油PDVSAと同国での事業をめぐって交渉するのを認めると明らかにした。即座にシェブロンの事業再開を認めるわけではないが、ベネズエラから米国への原油の輸入につながる可能性がある。

ベネズエラへの制裁緩和を検討する背景には、世界的なエネルギー情勢の変化がある。米政府はロシアによるウクライナ侵攻を受けて禁輸したロシア産原油の穴埋めを迫られている。ガソリン価格の高騰やインフレの加速など国民生活にも打撃となるなか、ベネズエラが原油の代替調達先の候補として浮上した。

ただ米国のキューバやベネズエラに対する制裁緩和は一部にとどまっている。キューバでは米国民の観光目的の渡航の禁止や米企業との取引制限といった規制の多くは残る見通しだ。キューバのロドリゲス外相は「正しい方向への一歩にすぎない」と指摘した。ベネズエラに対しても米企業との取引制限などの経済制裁は緩和していない。

全面的な制裁解除が難しいのは、人権問題に対する懸念が残っているからだ。キューバでは21年7月に大規模な反政府デモが発生し、当局が参加者を相次ぎ拘束した。反発した米政府は1月にキューバの政府高官に対してビザを制限するなどの制裁措置を発表した。米議会ではベネズエラの反米マドゥロ政権への制裁緩和に対しても慎重論が根強い。

米政府がこの時期に制裁緩和を打ち出す背景には、6月に開く米州首脳会議に向けて中南米との結束を示したいという思惑もある。米政府高官は米州首脳会議にキューバやベネズエラを招待しない可能性に言及し、メキシコなどの反発を招いた。中南米ではグアテマラなど会議欠席を表明する国が相次ぎ、米国との溝が鮮明になっている。

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