野生生物の多様性、48年間で69%損失 WWFなど調査

【ワシントン=赤木俊介】世界自然保護基金(WWF)と英ロンドン動物学会(ZSL)は、1970年から2018年の48年間に野生動物の個体群の増減を測定する指数が平均69%減少し、生物多様性が大きく損なわれているとのリポートをまとめた。2020年に発表された前回調査に続き個体群の減少に歯止めがかかる気配がない。WWFは気候変動や森林伐採が世界の生態系を脅かしていると指摘した。
専門家が野生の脊椎動物(哺乳類、鳥類、はちゅう類、両生類、魚類)5230種の個体群の増減を地域別・種族別に調査し、「生きている地球指数」(LPI)としてまとめた。無脊椎動物や研究が進んでいない動物を含まないため、実際はより深刻な規模で多様性が失われている可能性がある。
地域別では中南米・カリブ海地域で1970年より94%減、アフリカで66%減とそれぞれ大きく減っている。アジア・太平洋(55%)、北米(20%)、欧州・中央アジア(18%)でも種族別の個体群が平均で減少した。特に淡水域で生息する種族の個体群が世界で平均83%減と深刻だった。河川の汚染や外来種の増加により在来種が脅かされている。
WWFのランベルティー二事務局長は声明で「最も脆弱な野生動物はすでに危機にひんしている」と分析。「気候変動による環境破壊は極度の貧困、異常気象による食料不足、新たな感染症のまん延などにつながる」と述べ、環境保全が野生動物だけでなく人類にとって道徳的にも経済的にも最優先課題であると強調した。
米アラスカ州では州の漁業狩猟局が10日にベーリング海のズワイガニ漁を解禁しないと発表した。同局の研究員、ベンジャミン・ダリー氏は米CNNの取材で「2018年から2021年の間でベーリング海のズワイガニの個体数は70億匹減少した」と説明。カニなどの甲殻類はWWFの調査に含まれていないが、気候変動により個体数が減少している恐れがある。