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Microsoft、ナデラCEOが会長兼務 21年ぶり権限集中

(更新)

【シリコンバレー=奥平和行】米マイクロソフトは16日、サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が同日付で会長を兼務すると発表した。ジョン・トンプソン前会長は筆頭独立社外取締役に就いた。クラウドコンピューティング事業に注力することで企業価値を高めてきたナデラ氏に権限が集中する。

マイクロソフトで会長とCEOを同一人物が務めるのは、2000年に共同創業者のビル・ゲイツ氏がスティーブ・バルマー氏にCEO職を譲って以来21年ぶりとなる。また同社で社内出身者が会長に就くのは約7年ぶりだ。

16日に開いた取締役会で社外取締役がナデラ氏を会長に選任した。マイクロソフトは同日の声明で、「ナデラ氏は事業に対する深い理解をもとに取締役会の議題を設定する役割を担う」と説明した。トンプソン氏は社外取締役のとりまとめ役となり、CEOの業績評価を主導する。

ナデラ氏は14年2月にマイクロソフトの3代目のCEOに就任し、クラウドに注力することで同社を成長路線に戻した。世界のクラウド市場で「アジュール」は米アマゾン・ドット・コムの「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」に次ぐシェアを確保した。

16年にビジネス向けSNS(交流サイト)を運営する米リンクトインを傘下に収めたほか、今年4月には医師の利用が多い音声認識サービスの米ニュアンス・コミュニケーションズを買収すると発表した。企業向けサービスやクラウドといった主力事業の周辺領域でM&A(合併・買収)を重ね、買収先の経営を尊重する緩やかな統合で成果をあげた。

株式時価総額はナデラ氏のCEO就任から現在までに6倍以上へと拡大し、1兆9000億ドル(約210兆円)に上る。米IT(情報技術)大手ではアップルに次ぐ水準だ。会長兼務はこうした成果を取締役会が評価していることを反映している。

ただ、CEOが会長を兼務することや、社内出身者が会長を務めることに対しては一部の投資家が企業統治の観点から問題があるとみている。アマゾンや米フェイスブックが5月に開いた定時株主総会では、独立した会長を置くことを義務付けるよう株主提案が提出された。いずれも否決されたが、企業統治に関する懸念に応えることが課題として浮上している。

米IT大手の独占や寡占に対して政界や当局が懸念を強めていることも気がかりだ。

マイクロソフトは1990年代に反トラスト法(独占禁止法)違反をめぐり、米司法省と対立した経緯がある。現在は過去の経験を生かして対応にあたっており、フェイスブックや米グーグルなどと比べれば当局との関係は良好だ。

ただ、規制の強化を目指す米議会下院の超党派議員は今月11日に反トラスト法の改正案を発表し、「時価総額6000億ドル」「米国内の企業ユーザーが10万社」などの条件を上回る企業への適用を視野に入れている。マイクロソフトも規制強化の対象となり、M&Aなどの足かせとなる可能性がある。

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