米議会が対中報告書、ミサイル配備へ「同盟国と協議を」

米議会の超党派諮問委員会は17日、中国の軍事力や経済に関する報告書(2021年版)を公表した。西太平洋で軍拡を進める中国に対抗するため、地上発射型の中距離ミサイルの配備についてインド太平洋地域の同盟国と協議するよう米政府に求めた。台湾有事に備え、日本との協力強化が望ましいとした。
米中経済安全保障再考委員会(USCC)が報告書をまとめた。同委員会は元政府高官らで構成し、米中関係の主要テーマについて専門家にヒアリングして年次報告書をまとめる。安全保障関係者の関心が高く、米政府や議会への影響力が強いとされる。
今年の報告書では中国による台湾侵攻に強い懸念を示した。「中国人民解放軍の指導部はリスクの高い台湾侵攻に必要な初期段階の能力を獲得した、またはすぐに獲得すると評価しているようだ」と指摘。中国が空・海から台湾への物資輸送を阻止し、サイバー攻撃やミサイル攻撃を実行する能力を持つと断定した。
台湾有事では、中国が米国の軍事介入を遅らせるため在日米軍へ先制攻撃を仕掛ける可能性があると分析した。中国の精密攻撃能力やミサイル保有数を踏まえ、中国が在日米軍のほぼ全ての艦船や200機以上の戦闘機、全ての主要な司令部、輸送施設、空軍基地の滑走路を攻撃する能力があるとした。
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は16日(米東部時間15日)に開いたバイデン米大統領とのオンライン協議で「台湾独立の分裂勢力が挑発的に迫り、レッドライン(越えてはならない一線)を突破すれば、我々は断固とした措置をとらざるを得ないだろう」と述べた。米国では中台統一へ武力行使を排除しない立場を示したと受け止められている。
報告書は「(台湾侵攻は)短期的にリスクの高い選択肢だ」とも強調した。「米国が中国に対する軍事作戦に参加するよう日本などの主要な同盟国を説得できれば、人民解放軍が台湾をめぐる戦争に勝利する能力はさらに不確実になるだろう」と唱えた。台湾有事に備え、日本と具体的な軍事協力を進めるべきだとする考えだ。
中国に対抗するため「米国の中距離戦力や別の戦力をパートナー国が受け入れる可能性について探る対話」を開くべきだと提言した。台湾有事では台湾上陸を目指す中国の艦船などを攻撃するうえで地上配備型の中距離ミサイルが有効との見方が多い。
経済面では米国企業の対中投資への監視を強める法整備を提言した。中国に工場や調達先を移す動きを審査する権限を政府に与えるよう求めた。
これまで米国は中国企業の対米投資を警戒してきた。米国の技術や情報が盗まれないよう対米外国投資委員会(CFIUS)が米国内への投資を審査する権限を法改正で強めている。
今回の提言は米企業による他国への投資にも安保上の網をかけるものだ。バイデン政権も米企業の対外投資規制について既に検討作業に着手しており、この動きが加速する可能性がある。
背景には習指導部が経済への統制を強めていることがある。企業が低コストという理由だけで中国調達を増やせば、サプライチェーン(供給網)から締め出されたときに該当企業だけでなく国の安保にも大きな脅威になる。
報告書は、米国の投資家による中国の株式や債券への投資についても規制を厳しくするよう訴えた。中国企業が規制を迂回して米国に上場して資金調達を増やしていることにも懸念を示した。
(ワシントン=中村亮、鳳山太成)

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