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GM、提携頓挫の再来も 新興EVに受注水増し疑惑

ローズタウン・モーターズが発売を予定するピックアップ型EV=AP

【シリコンバレー=白石武志】米ゼネラル・モーターズ(GM)が出資する新興電気自動車(EV)メーカー、米ローズタウン・モーターズが予約台数の水増し疑惑に揺れている。指摘したのは2020年に米同業のニコラの誇大宣伝疑惑を訴えた米投資会社だ。同社の告発によってニコラとの資本・業務提携が頓挫したGMにとっては、悪夢の再来となるおそれがある。

「注文のほとんどは架空のもの」

「注文のほとんどは架空のものであり、資本調達や正当性を与えるための小道具として使われている」。米投資会社ヒンデンブルグ・リサーチは3月12日に自社のホームページ上で開示した報告書の中で、ローズタウンが1月に「10万台超」と公表したEVの予約台数に疑義を唱えた。同時に同社に空売りを仕掛けたことも公表した。

ヒンデンブルグは疑惑の一例として、ローズタウンが1万4000台のEVを受注したとする会社はテキサス州の小さなアパートを拠点としており、車両を保有していないと指摘した。1000台を予約注文したとされる別の新興企業のオーナーは実際には車両を購入する意思はなく、予約注文は単なるマーケティング上の付き合いだと証言したという。

GM閉鎖工場の一部で生産計画

ローズタウンは電動技術などを手掛ける米ナスダック上場のワークホースグループを創業した米連続起業家のスティーブ・バーンズ最高経営責任者(CEO)が19年に設立した。米GMが同年に閉鎖したオハイオ州ローズタウンの工場の一部を譲り受け、21年9月にEVの生産を始める計画を示している。工場閉鎖に伴う雇用喪失について批判を受けかねなかったGMに、電動化の波に乗るスタートアップが救いの手を差し伸べた格好だ。

ローズタウンは20年6月に同工場で開いたイベントにペンス米副大統領(当時)を招き、ピックアップトラック型のEV「エンデュアランス」を発表するなどしたたかなマーケティング戦略で注目を集めた。生産設備を居抜きで提供したGMは2500万ドル(約27億円)の現金と現物出資を合わせて計7500万ドルをローズタウンに出資している。

ローズタウンはその後、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて20年10月に上場を果たした。21年1月に公表した投資家向けの説明資料のなかでは、生産開始から3年後の24年には最大10万7000台のEVを生産する計画を示している。これはEV市場で先行するテスラが03年の創業から約15年かけて達成した規模だ。ローズタウンはすでに10万台を超える予約注文を獲得したと公表することで、成長戦略に信ぴょう性を与える狙いだったとみられる。

EVの「SPAC」ブームに影

ローズタウンのバーンズCEOは3月17日に開いた20年10~12月期決算の電話会見で、ヒンデンブルグの指摘について米証券取引委員会(SEC)から情報提供の要請を受けていると述べた。特別調査委員会を社内に設置したことも明らかにし、「同委員会が検討を終えるまで本件についてコメントすることはできない」と疑惑に口をつぐんだ。

米国の一般的な新規株式公開(IPO)では発行価格を不当に引き上げることを防ぐため、今後の業績見通しを開示することは禁じられている。しかしSPAC経由の場合には既に上場している会社との合併となるため、こうしたルールは適用されない。売上高がほぼゼロであっても、今後数年の具体的な数値目標を示すことが容認されている。

ローズタウンに限らず、SPAC上場を表明した米新興EVメーカーの多くは自社技術の優位性と強気の業績見通しを示すことで投資家からの評価を得ようと躍起だ。21年4~6月にSPAC上場を予定する米ファラデー・フューチャーや米ルシード・モータースはいずれも量産実績はないものの、今後4~5年でEVの年間販売台数が30万台前後になるという強気の数値目標を示している。

過去に公開した電動トラックの映像について「坂道を転がしていただけ」とヒンデンブルグに指摘されていたニコラは21年2月の米証券当局への開示のなかで、情報開示について「不正確だった」と自ら認めた。20年9月にニコラと車両生産の協力を含む資本・業務提携で基本合意していたGMはその後、出資を取りやめて提携範囲も縮小した。

ローズタウンの幹部らが17日の電話会見で歯切れの悪い説明に終始したことで、同社の株価は同日の時間外取引で一時5%超下落した。ニコラに続く疑惑を抱え込む形になったGMの広報担当者は「ローズタウンの事業に関与しておらず、空売り勢の報告書や関連する事柄についてコメントできない」と述べた。今後、SECの調査が進み不正が確認されるようなら、EV業界に広がるSPAC上場ブームに水を差すおそれもある。

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