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エヌビディア「巨大IT」の看板あらわに アーム買収断念

【シリコンバレー=佐藤浩実】米エヌビディアが成長戦略を見直し始めた。英半導体設計アームの買収を断念し、同社との協業を通じたCPU(中央演算処理装置)の開発に主軸を移す。ソフトウエア事業の拡大にも意欲を示す。買収手続きを通じて「巨大IT(情報技術)」の看板があらわになり、当局の警戒が強まるなか、新たな成長機会を模索する。

「アームの技術を使う複数のプロジェクトが走っている」。16日に開いた2022年1月期の決算説明会、頓挫した買収のむなしさをかき消すようにジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は強調した。人工知能(AI)の計算に使う新たなCPUを23年前半に発売し、ロボットや自律走行車向けプロセッサーの開発も進める。「面白いCPUを数多く目にするだろう」(ファン氏)

7日夜に買収断念を発表して以降、ファン氏が公の場で話すのは初めて。「競争法当局に安心感を与えられなかった」と認めつつ、今後20年にわたるアームの技術ライセンスを獲得した点を強調した。「技術や市場に応じて柔軟な選択ができる」(ファン氏)。AI計算やデータ分析など膨大な処理を高速に行う「加速コンピューティング」に焦点を定める戦略は変更しない。

市場は冷静に受け止めている。米ウェドブッシュ証券のアナリスト、マシュー・ブライソン氏は「買収しなくてもライセンスを使えるため、低消費電力のAIプロセッサーなどでリーダーになるチャンスはある」と指摘する。半導体業界に詳しい米調査会社フーチュラム・リサーチのダニエル・ニューマン氏も「スマートフォン市場への参入機会を失ったが、最小限の後退にとどめた」とみる。

22年1月期は利益2.3倍

16日に開示した業績が楽観論を強めた。22年1月期の通期売上高は前の期比61%増の269億1400万ドル(約3兆1000億円)、純利益は2.3倍の97億5200万ドルだった。21年1~12月期の純利益が前の期比27%増だった米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)や、同5%減の米インテルと比べても好調ぶりが際立つ。

ただ、1年4カ月に及ぶ買収手続きで浮き彫りになった規制当局の反応は懸念を残す。米連邦取引委員会(FTC)は買収を差し止めるため21年12月に起こした訴訟で、エヌビディアを「世界で最も大きく、企業価値の高いコンピューティング企業の一つ」と指摘した。半導体企業の枠にとどまらないファンCEOの野心に対する、警戒心をのぞかせた。

時価総額でメタ超え

エヌビディアの時価総額は16日時点で6620億ドルを超え、「巨大IT」の1社であるメタ(旧フェイスブック)の5890億ドルを上回る。主力サービスの利用者減によってメタの株価が2月に急落したため起きた逆転ではあるものの、米国のIT企業で6位につける。米半導体メーカーでは群を抜くトップだ。

ファン氏が説明会で強調したソフト戦略も、一般的な半導体メーカーの事業領域を超えつつある。従来も周辺のソフトを含めて投資することでAI計算などに使う半導体の販売につなげてきたが、21年秋には3次元仮想空間の構築に使う設計ツールのサブスクリプション(継続課金型)サービスを始めた。ファン氏はソフトについて「大きな事業機会になる」と言う。

世界の競争法当局は既に、IT大手の影響力の大きさを警戒している。エヌビディアがハードとソフトの両面で存在感を強めるほど、当局の視線は厳しくなる。将来のM&A(合併・買収)にも影響が及ぶ可能性があり、独力での成長がいっそう求められそうだ。

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