SECが運営会社と創設者提訴 仮想通貨テラ、詐欺疑い

【ニューヨーク=大島有美子】米証券取引委員会(SEC)は16日、2022年5月に暴落した暗号資産(仮想通貨)「テラUSD」の運営会社テラフォーム・ラブズ(韓国)とその創設者、ド・クォン氏を提訴したと発表した。トークンの価値をつり上げ、投資家に損失をもたらす詐欺を犯したと主張した。
16日に米ニューヨーク州の連邦地方裁判所に訴状を提出した。テラはドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコインのなかでも、法定通貨を裏付けの担保にするものではなく、無担保型あるいはアルゴリズム型と呼ばれる。ビットコイン相場の下落などを背景に価値を保つためのアルゴリズムが機能しなくなり、22年5月に急落した。テラの関連仮想通貨の「ルナ」もあわせて暴落した。
SECによると、テラフォームとクォン氏は18年4月から22年5月にかけて「多くが無登録の暗号資産証券を提供・販売して投資家から数十億ドル(約数千億円)を調達した」。20%もの高利回りをうたってテラを宣伝・販売するなど「ルナに価値が発生すると繰り返し誤解させ、投資家を欺いた」と訴える。テラの価値の安定さについても「投資家を誤解させた」とした。
訴状によると、テラや関連の仮想通貨の暴落で吹き飛んだ市場価値は合計400億ドルにのぼる。テラフォームとクォン氏は「多くの暗号資産証券に必要な完全かつ公正で、正しい開示をしなかった」(SECのゲンスラー委員長)。SEC幹部は「テラのシステムは分散型でもなければ、金融でもない。『ステーブルコイン』に支えられた単なる詐欺だ」と主張した。
テラの急落は仮想通貨関連企業の連鎖破綻をもたらした。仮想通貨のヘッジファンド、スリーアローズキャピタル(シンガポール)はテラやルナなどに投資して経営難に陥り22年7月に破綻した。スリーアローズに仮想通貨を貸与していた融資サービスの米ボイジャー・デジタルも破綻した。
SECは価値の安定をうたうステーブルコインへの包囲網を強めている。交換業大手バイナンスのステーブルコイン「バイナンスUSドル(BUSD)」を発行する米仮想通貨関連企業パクソス・トラストに対しても、投資家保護の違反で提訴を検討する方針が伝わっている。バイナンスのチャンポン・ジャオ最高経営責任者(CEO)は「裁判所がBUSDを証券とする判断を下せば、仮想通貨業界に重大な影響を与える」と警戒を示す。
SECは米リップル社の仮想通貨「XRP」を未登録の有価証券とみなし、投資家保護に違反したとして同社と係争中だ。同裁判の行方も他の訴訟に影響を及ぼす可能性がある。
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