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FRB議長「物価上昇、予想より大きく」 会見要旨

(更新)
FRBのパウエル議長(16日)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は16日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を開いた。物価上昇率について、急速な経済再開による消費の持ち直しや供給制約の影響が「予想より大きかった」と述べ、今後の上昇率も「予測を上回る値が続きうる」との見通しを示した。主な発言と質疑応答は以下の通り。

きょう、我々は政策金利をゼロ近傍に据え置き、一定量の国債購入を維持すると決めた。金利とバランスシートに関する我々の力強いガイダンス(指針)と合わせて、金融政策が、経済が回復をなし遂げるまで強く支えることを保証するだろう。

経済活動の指標や雇用指標は引き続き改善しており、2021年の実質国内総生産(GDP)はここ数十年で最も大きな増加率となりそうだ。急速な経済拡大は沈んでいた活動が再開していることを反映している。パンデミック(世界的大流行)の打撃を最も受けた分野は弱いままだが、改善がみられる。

家計による消費は急速に増え、住宅市場は強く、企業の設備投資は底堅いペースで拡大している。産業によっては、短期の供給制約が活動の足かせとなっている。FOMC参加者による今年の経済成長率予測は3月時点より上方修正された。それでもなお回復は途上であり、経済の先行きに対するリスクは残っている。

雇用情勢も改善しているが、そのペースは一様ではない。娯楽やホテルの分野の雇用者数はめざましく増えているが、パンデミック前の水準は大きく下回ったままだ。5月の失業率は5.8%に上昇した。子供のケアの必要、ウイルスへの恐れ、失業給付は雇用の増加に重荷となっているようだ。ワクチン接種が進めばこうした要素は今後数カ月で薄れ、雇用増につながるだろう。

ガソリン価格の上昇は物価上昇をけん引(2日、カリフォルニア州)=ロイター

物価上昇は特にここ数カ月で加速し、12カ月平均でみた個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率は4月に3.6%に達し、落ち着くまでには今後数か月かかりそうだ。要因にはエネルギー価格の上昇のほか、経済再開で消費が持ち直し物価上昇圧力がかかっていることもある。短期的な供給制約も生じており、その影響は予想されていたものより大きかった。

FOMC参加者は物価上昇率の予測を修正した。特に変えたのは今年の予測だ。一時的な供給制約が和らげば、物価上昇率は我々の長期的な目標に向けて下がっていくだろう。経済再開の過程は、パンデミック初期の封鎖同様、前例のないものだ。再開が進むにつれ、需要動向の変化は大きく急速なものになり得るし、労働者確保の難しさなど供給制約は継続して供給量を左右しうる。

よって物価上昇率は我々が予測を上回る値が長く続きうる。金融政策の枠組みでは物価の安定と最大雇用の実現に向けた我々の能力を高めるために、期待物価上昇率が固定されることが重要だ。もし物価上昇の道筋や、長期的な期待物価上昇率が実際に、長期にわたって我々の目標を超えるような兆候があれば、金融政策の構えを調整する用意がある。

パンデミックは引き続き経済の先行きにリスクをもたらしている。ワクチン接種が進み、コロナ感染を抑制し、公衆衛生危機が経済に与える影響を縮小させるだろう。だが接種ペースは鈍ってきており、変異ウイルスがリスクだ。

声明で繰り返したように、物価上昇率が2%をずっと下回るようなら、我々はしばらくの間、2%を適度に超えるように目標を定めるだろう。雇用と物価目標が達成されるまで、我々は緩和姿勢を維持する。多くの参加者はこうした好ましい経済環境が過去の予測より早く実現できると考えている。政策金利の予測の中央値は23年に下限を上回る形となった。

これらの予測は委員会の決定や計画を示すものではなく、今後数年の経済がどこに向かうのか誰も確信を持ってはいない。あらゆる予測より重要なのは、いつ(ゼロ金利政策の)解除がされようと、金融政策は極めて緩和的であり続けるという事実だ。解除の条件に近づくということは、回復が力強く政策金利をゼロに据え置く必要がないということを示す。我々は米国債の購入を少なくとも月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドルのペースで買い入れる施策を続ける。

(金融機関がFRBに預ける預金に付ける)準備預金金利を0.05%引き上げる技術的な調整を実施した。(銀行間で取引される)フェデラル・ファンド(FF、政策)金利を目標内におさめるためと、短期金融市場の機能を円滑にするためだ。この調整は政策金利の道筋や金融政策のスタンスと関連したものではない。

記者会見での一問一答は以下の通り。

 ――失業者の労働市場への戻りが鈍いようだが、23年までの労働市場の見通しは。

 「今後1~2年以内に失業率が低下し、労働参加率が上昇し、賃金が上昇すると自信を持って言える。ただ大量の雇用者が退職することで労働市場に人が戻るペースが鈍いことは確かだ。要因として、求職者のスキルと求人内容のミスマッチ、感染への懸念などが挙げられる。ワクチン接種の普及とともにこうした問題は解決し、失業給付も9月末にかけて終了することで労働者は戻ってくる」

「ただ、現在直面している労働市場は前代未聞だ。我々のデータを理解する能力を謙虚に捉えるべきだと思う。今は労働市場や物価上昇率、それを踏まえた金融政策についてきっちりとした予測を出す時ではない。数カ月たてば、我々の考えを伝えられるときがくるだろう」

「経済が好調であれば、賃金上昇は当然だ。新たな職に就く人を中心に賃金上昇がみられる。生産性や物価上昇率を大幅に上回る賃金となれば企業は値上げを余儀なくされる悪循環に陥ってしまうが、今はこうした事態は起きていない」

 ――どの程度、高い物価上昇率が続けば懸念材料として捉えるのか。

「過去数カ月間、物価上昇率は予想を上回って推移しているが、その中身をみれば我々の想定と一致する。物価上昇をけん引しているのは経済再開に関連する項目で、木材や中古車価格などがそうだ。供給制約で価格が一時的に上昇したが、いずれは落ち着くだろう。具体的な期間は言えないが、FOMC参加者は、23年には物価上昇率が我々の(2%)目標に近づくと予測している。その上昇は、非常に強い経済成長により、経済全般で雇用などリソースが逼迫し、インフレ圧力が高まることによる」

「期待物価上昇率に関しては長期的に見るようにしている。短期の物価上昇はガソリン価格などに左右されやすく、将来の物価上昇の予測には適切ではない。欧州中央銀行(ECB)や日銀のように、低い期待インフレ率が長期間続き、抜け出すのが困難になる状況は懸念していた。従って期待物価上昇率が許容範囲内で長期的に上昇するのは良いことだ。予測に正確な手法があるわけではなく、広範囲の物価指標の動きをみるようにしている」

「モノに対する需要は非常に大きく減速していない。サービス業も再開しており、価格は底値から戻りつつある。焦点となるのは、現在の高い物価上昇率が今後緩和されるかだ。直近の消費者物価指数(CPI)で大きく上昇したホテルや航空券などの価格も、木材や中古車と同様、大幅に上昇し続けることはないだろう」

――資産買い取りの縮小(量的緩和の縮小)を始める時期について議論したか。どのように周知するのか。

「時期については、より多くのデータが出た時点で言えると思うが、今はその予定を言える状況ではない。ただ(経済情勢について)議論したとは言える。経済は目標からはまだ遠いものの明らかに進展し、今後も続くとみている。その場合、資産購入の縮小についての計画を公表するのが適切だろう。今後の会合で景気の状況を評価し、参加者が一段の進展を認識したら、前もってその計画を知らせる」

「重視するのは、秩序だった方法で、透明性を確保することだ。我々の考えを前もって明確に伝えることに大きな意味があり、量的緩和の縮小を発表する前に伝えるよう努める。現時点で決まったことはなく、もっとデータを見なければならない。前進してはいるが、まだ遠いだろう」

――22年の経済予測を達成すれば、経済状況が大きく進展したと言えるのか。中期の政策見通しでは23年に利上げを2回実施することになるが、景気の完全回復が予想よりも早く来るということか。

「大きな進展に到達したかの判断はFOMCがするものであって、私が具体的な数字を引用して示すのは適切ではない。利上げの見込みは参加者個人の予想であり、FOMCとしての予測や計画ではない。今回の会合では利上げをいつ実施すべきかという議論はなかった。利上げの議論は時期尚早だからだ」

「ドットチャートは将来の利上げの有無を予測するためのツールとしてはふさわしくない。見通しが示すのは、景気の目標をこれまでの予測より早く達成できるとみるメンバーが増えているということだ。また利上げは今のFOMCの議論の中心ではなく、資産買い取りの方が重要だ。利上げはまだ先の話だ」

――今後、(景気停滞とインフレが同時に進む)スタグフレーションのリスクはないか?

「今年より財政支援がずっと少ない経済となるが、それでも長期的な潜在成長率をはるかに上回る非常に強い成長になると見られている。物価上昇率が想定より高まる可能性はある。だが根底にある高齢化、低生産性、グローバリゼーションといった物価上昇を抑制しているものが大きく変わるとは考えにくい」

(米州総局=大島有美子、伴百江、長沼亜紀、野村優子)

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