高齢者のファイザー3回接種、米で承認 65歳未満見送り

【ニューヨーク=野村優子】米食品医薬品局(FDA)は22日、ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンの3回目の追加接種(ブースター接種)について、65歳以上や重症化リスクの高い人を対象に承認すると発表した。追加接種が認められるのは、2回目を接種してから少なくとも6カ月後となる。一方、16歳以上65歳未満の追加接種については、承認を見送った。
17日にFDAが開いた第三者委員会で、16歳以上への追加接種は安全性などのデータが不足しているとして推奨されなかったものの、65歳以上と重症化リスクの高い人への追加接種が推奨された。FDAは第三者委の議論を踏まえて、一部対象者への承認を最終決定した。
ほかにも教師、スーパーや介護施設の従業員など、感染リスクの高い職に就く人の追加接種が認められた。FDAのウッドコック局長代理は声明で「現在入手可能なデータを総合的にみて、特定のグループへの追加接種を認めた。安全性と有効性の詳細が明らかになっていけば、迅速に評価していく」と述べた。
時間の経過とともにワクチンの予防効果が低下するとして、対象者への追加接種は利益がリスクを上回ると判断した。安全性については、18~55歳で306人、65歳以上で12人のデータを評価しており、注射部位の痛みや腫れ、倦怠(けんたい)感、頭痛など2回目と同様の副反応がみられた。わきの下のリンパ節の腫れは、2回目よりも追加接種の後の方が頻繁にみられたという。
追加接種の開始には、FDAの承認と米疾病対策センター(CDC)の勧告が必要になる。CDCは23日の専門家会合で、追加接種の対象者について協議する予定だ。これを踏まえて、米国で追加接種が始まる。CDCによると、65歳以上の83%が接種完了している。
もっとも、バイデン政権は今週から幅広い年齢層への追加接種を開始する計画だったため、当初見込んでいた規模からは大幅な縮小となり、遅れも出そうだ。8月時点ではファイザー製とモデルナ製について、2回目の接種を終えてから8カ月後に追加接種する計画だった。モデルナ製も同時期に追加接種の開始を見込んでいたが、FDAの審査中でまだ承認されていない。
製薬各社は追加接種の必要性を訴えている。ファイザーがFDAに提出したデータによると、2回の接種後に徐々にデルタ型への感染予防効果は下がり、4カ月以降に当初の53%になった。デルタ型以外に対しても97%から67%に下がった。追加接種すれば感染リスクは約11分の1になるとした。
追加接種に対して、懐疑的な見方は台頭していた。FDAの一部の研究者らは英医学誌ランセットに13日公開した論文で「重症化予防には高い効果を維持しているので、現状では一般の人への追加接種は必要ない」と主張。米政府が推奨する追加接種について「正当な科学的証拠が十分示されていない」などと指摘した。
世界保健機関(WHO)は、途上国への供給を優先すべきだと主張してきた。テドロス事務局長は8月、追加接種について「一時的にやめるよう呼びかけたい。医療関係者の接種さえ終わっていない国を助けるべきだ」と呼びかけている。
世界ではイスラエルが8月に3回目の追加接種を開始し、先行している。フランスは9月上旬から高齢者を対象に追加接種を開始しているほか、英国も近く開始する予定だ。日本も17日、国内で3回目の追加接種を実施する方針を固めた。
米国は3回目のワクチンを確保済みだ。7月にファイザー製を2億回分、6月にはモデルナ製を2億回分追加購入しており、一部は年内に供給予定という。欧州連合(EU)も追加接種に向けて5月にファイザー製を18億回分、6月にモデルナ製を1億5千万回分追加購入している。

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