米国務長官「ロシア軍、増強を継続」 撤収表明巡り批判

【ワシントン=坂口幸裕】ブリンケン米国務長官は16日、ウクライナ国境付近からの軍部隊の一部撤収を表明したロシアを「言行不一致だ」と批判した。「我々が目にしているのは意味のある撤収ではない。むしろ引き続き国境に軍隊を集結させている」と述べた。
ロシア国防省は16日、軍事演習を終えた軍用車両などがクリミア半島を離れる様子を撮影したビデオを公開した。一方、米国と北大西洋条約機構(NATO)は緊張緩和につながっていないと警戒を維持する。バイデン米大統領は15日の演説で、これまで10万人超と分析していた国境付近のロシア軍が15万人超に拡大したと明かした。
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ブリンケン氏は「大規模な部隊が投入されているだけでなく、国境に向かって移動している。国境から離れるのを見る必要がある」と語った。ABCテレビ、MSNBCのインタビューに答えた。
米政府高官は16日、国境周辺から軍部隊を一部撤収したとのロシアの発表について「偽りだとわかった。ここ数日で7000人ほど増えている」と記者団に説明した。
ホワイトハウスのサキ大統領報道官は16日の記者会見で撤収の判断基準について、ウクライナ国境での検証可能な軍部隊の削減が必要だとの認識を示した。軍隊の数では評価しないと明言した。
ロシアのプーチン大統領はNATOの東方拡大停止を確約するよう米欧に要求している。ブリンケン氏はロシアの脅威の高まりを受け「NATOはより団結し、強固になった。防衛のためにより多くの軍がロシアに近づいた」と指摘。「ロシアの行動がウクライナをロシアから遠ざけている。それこそプーチン氏が望んでいないことだ」と訴えた。
ロイター通信によると、ウクライナ国防省が15日にサイバー攻撃に遭い、ウェブサイトへのアクセスが遮断された。同国内の銀行も攻撃を受けた。米政府はロシアからの攻撃かどうかは明らかにしていない。
国務省のプライス報道官は16日の米CNNテレビで、ロシアの行動について「サイバー攻撃、電子戦、空爆、大規模な侵攻などあらゆる手段が考えられる」と警戒感を示した。
ロシア軍機、地中海で米哨戒機を進路妨害 米国防総省
【ワシントン=中村亮】米国防総省は16日、ロシア軍機が先週末にかけて地中海の国際空域で米海軍の哨戒機を進路妨害したと明らかにした。妨害は3回あり、声明で「プロフェッショナルでない」と批判した。ウクライナを巡り米ロ対立が激しくなるなか、偶発的衝突のリスクを想起させる。
国防総省は声明で米海軍の哨戒機「P-8Aポセイドン」が進路妨害を受けたと説明した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、1回は5フィート(約1.5メートル)まで接近したという。国防総省は「けが人はいなかったが、このようなやり取りはさらに危険な結果につながる誤解や誤りを引き起こしかねない」と強調した。外交ルートを通じてロシアに懸念を伝えた。
米海軍によると、P-8Aポセイドンは対潜水艦作戦や情報収集活動に使われる。ウクライナ情勢が緊迫しており、P-8Aは黒海や地中海などの上空からロシア軍の動きを偵察していた可能性がある。
国防総省は「米国は安全かつプロフェッショナルに国際法に沿った形で国際水域や空域で活動を続ける。ロシアが同じようにすることを望む」と訴えた。
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ロシアがウクライナに侵攻しました。NATO加盟をめざすウクライナに対し、ロシアはかねて軍事圧力を強めていました。米欧や日本は相次いでロシアへの制裁に動いています。最新ニュースと解説をまとめました。
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