米ファイザー、コロナ飲み薬の使用許可を申請 米当局に

【ニューヨーク=野村優子】米製薬大手ファイザーは16日、開発中の新型コロナウイルスの飲み薬「パクスロビド」について、米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請したと発表した。臨床試験(治験)では投与した人の入院・死亡リスクが89%減った。飲み薬の使用申請は米メルクに次いで2例目となる。
パクスロビドは、ウイルスが体内で感染を広げるのに必要なプロテアーゼという酵素の働きを阻む「プロテアーゼ阻害薬」。1回の治療でパクスロビド2錠、抗HIV(エイズウイルス)薬「リトナビル」1錠をそれぞれ1日2回、5日間かけて投与する。
治験参加者は軽度から中程度の新型コロナ患者で、重症化リスクの高い18歳以上の人。発症から3日以内の患者に投与したところ、投与していないグループに比べて入院・死亡リスクが89%低減した。副作用は軽度という。
飲み薬は既存の点滴薬などに比べて利便性が高く、在宅治療が可能になるため期待が高い。アルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は同日の声明で「パクスロビドが承認されれば人々の命を救い、病院に行かずにすむ可能性がある。飲み薬が果たす役割の重要性は明らかだ」と述べた。
米国のほかに英国やオーストラリアなどの国で承認申請の手続きを開始しており、他の地域の規制当局にも順次申請していく計画だ。
パクスロビドの生産は2021年末までに18万回分、22年は5000万回分を見込む。ファイザーは同日、途上国への供給を広げるため、国連の関係機関がつくったNPO「医薬品特許プール(MPP)」にパクスロビドの製造ライセンスを供与すると発表した。
新型コロナの飲み薬を巡っては、英国が11月上旬に世界で初めてメルクの「モルヌピラビル」を承認した。米国では10月中旬にメルクがモルヌピラビルの緊急使用許可を申請。FDAは30日に同薬の承認を審議する第三者委員会を開催する予定で、これを踏まえて承認を最終判断する。

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