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FRB、量的緩和を長期維持 「完全雇用に近づくまで」

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【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国債などを大量に買い入れる量的緩和の指針を強化して「米国債などの購入を、完全雇用と物価安定に近づくまで継続する」と表明した。新型コロナウイルスの感染再拡大で雇用が悪化しており、長期の金融緩和を宣言して景気回復期待をつなぎ留める。

15~16日のFOMCでは事実上のゼロ金利政策の維持も決めた。会合参加者は2023年末までの政策見通しも提示し、同年末までゼロ金利を据え置くシナリオが中央値となった。FRBは物価上昇率が2%に到達するまでゼロ金利政策を維持すると既に表明している。記者会見したパウエル議長は「コロナ感染の再拡大で米景気は今後数カ月が試練だ」と警戒感を表明した。

3月に再開した量的緩和政策は、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)も同400億ドルのペースで買い入れている。FOMCはこれまで買い入れ期間を「今後数カ月」としか表明してこなかったが、今回は「完全雇用と物価安定の達成が十分に近づくまで購入を続ける」と長期維持を宣言した。購入量そのものは「少なくとも現在のペースを維持する」とした。

量的緩和を長く続ければ、長期金利を当面押し下げることができる。米国は新型コロナ禍で再び企業や家計の心理が悪化しており、長期緩和で投資意欲などを引き出す狙いがある。米連邦政府も大型の経済対策で債務が膨張しており、量的緩和による金利の低下は債務負担の軽減につながる。

パウエル議長は「必要になれば追加緩和に踏み切る」と述べたものの、今回は米国債などの買い入れ量を増やす追加緩和自体は見送った。FRBは追加緩和の手段として「米国債などの購入拡大」と「購入国債の年限の長期化」を明示してきた。追加の財政出動やワクチンの普及などが景気を上向かせる可能性があり、景気リスクを見極めて追加緩和の是非を検討する方針だ。

FRBは量的緩和の期間を具体的な数値で示すのも見送った。FOMCは16日、労働市場の長期的な「均衡値」として4.1%の失業率を挙げており、完全雇用を示す一つの目安となる。FOMC参加者の景気見通しでは、失業率は22年に4.2%、23年に3.7%へと低下する。いずれもコロナ危機前の今年2月に付けた約50年ぶりの低水準(3.5%)にも近づくことになり、量的緩和解除の目安となりそうだ。

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