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米本土射程の北朝鮮ミサイル開発に危機感 国防情報局

軍事力分析の報告書

(更新)

【ワシントン=坂口幸裕】米国防情報局は15日、北朝鮮の軍事力の現状を分析した報告書をまとめた。米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)を念頭に「来年に長距離ミサイルの発射実験を実施する可能性がある」と指摘した。北朝鮮が2018年からICBM発射を凍結しつつ、核・ミサイル開発を継続する現状に危機感を強める。

「北朝鮮の軍事力 拡大する地域・グローバルの脅威」と題した報告書は70ページ近くにわたって、北朝鮮の建国の歴史から金正恩(キム・ジョンウン)総書記の体制までを詳細に解析している。

金総書記のもと「核兵器を弾道ミサイルに搭載し、確実にシステムとして機能させることが究極の目標だ」と強調した。17年以降は核実験に踏み切っていないものの「兵器の性能を検証するための地下核実験を実施する可能性がある」と警戒する。

北朝鮮はトランプ前政権との約束を踏まえてICBMの発射実験を中断してきたが、米軍には「近い将来、発射実験を始めるかもしれない」(米北方軍のバンハーク司令官)との見方が出ている。

報告書は「長距離弾道ミサイルに搭載可能な核兵器を実証すれば米国が北朝鮮に行動を起こすのを防ぐことができると判断しているようだ」とも記した。「液体燃料よりも短時間で装塡できる固体型燃料を使った弾道ミサイル開発にも取り組む」との見通しも示した。

北朝鮮のミサイル能力の向上は顕著だ。同国は9月28日に日本海に向けて発射したミサイルが「極超音速ミサイル」の実験だったと明らかにした。相手の迎撃網をすりぬけるように複雑な軌道で飛ぶため迎撃は極めて困難とされる。

米国防情報局は「大量破壊兵器の能力がなくても、このような通常兵器の能力は韓国、日本、この地域の米軍に一定の脅威を与え続けている」と懸念する。

潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を巡っては「造船所の改良と拡張により、同時に複数のミサイルを発射・搭載できる能力を持つ、より大型の潜水艦を製造するかもしれない」との見解を示す。

報告書では北朝鮮のサイバー攻撃にも言及した。米国や欧州への攻撃を通じ「核兵器の小型化や弾道ミサイルなどの重要な技術データを流出させている」と明記。「北朝鮮のハッカーは年間8億6千万ドル(980億円)を得ていると推定され、その一部が軍事活動を支えている」と記した。

歴史的に関係の深い中国、ロシアとは「18年以降、どちらの国にもほとんど信頼を寄せていない傾向がある」と説いた。中国とは「政治的独立を維持したいと考えているだろう」と指摘。ロシアは「相対的に重要でないパートナー」ととらえているとみる。

報告書を出した今回のタイミングは北朝鮮に接近する韓国にクギを刺す狙いが透ける。バイデン政権も北朝鮮と対話を探るが、同国が核・ミサイル開発を継続している現状で過度な譲歩をする状況にはないとみる。米政権内には文在寅(ムン・ジェイン)政権が22年5月の任期満了までに対北朝鮮外交での成果を狙っているとの疑心がある。

ハドソン研究所 パトリック・クローニン氏の話 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の最後の数ヶ月を利用している。一方的に譲歩を引き出せれば、制裁を緩和して北朝鮮の核保有国の地位を強固なものにして将来の米国との協議に利用できる。
韓国政府は南北間の敵対関係を解消したいという自らの願望が平壌に利用されていることに目を向けなければならない。文政権の目標である朝鮮戦争の終戦宣言だけでは現場の実態は変わらず、自己満足にすぎない。
(聞き手はワシントン=中村亮)

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